2011 Fiscal Year Research-status Report
国家財政破綻回避のための法的枠組み~租税法と財政法の協働による世代間衡平の探求~
Project/Area Number |
23730022
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神山 弘行 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00361452)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 租税法 / 財政法 / 公法学 / 法と経済学 / 国際情報交換 / アメリカ:イギリス |
Research Abstract |
本研究の目的は,世代間衡平の観点から,租税法と財政法の知見を統合し,財政破綻回避のための法的枠組みを探求することである。 研究実施初年度である平成23年度は,研究計画の第1段階である「租税法の事実解明的分析」を達成するべく,法学者や行政実務家が直感的な形で考慮してきた,租税法の背後に存在する「現実的人間像」を抽出するために,文献調査を中心としつつ,日本およびアメリカの研究者・実務家への聞き取り調査もあわせて行った。また,人間の限定合理性に着目をする行動経済学の分野における議論を参照することで,人間の意思決定に関する基礎理論をレビューするとともに,法解釈学・法政策論への応用可能性について検討を加えた。個人の限定合理的な意思決定の背後には,受動的選択,ペイ・オフの複雑性,限定的経験,宣伝広告の影響,異時点間の選択等といった諸要因が存在していることが明らかになった。さらに本年度は,研究計画の第2段階である「租税法の規範的再構築」の準備作業も行った。 上記研究の成果は,前年度科研費若手研究(B)〔課題番号21730019〕の研究成果の一部を基に執筆された論文〔神山弘行「租税法における年度帰属の理論と法的構造(一)~(五・完)」法学協会雑誌128巻10号1-79頁,同巻12号194-272頁(以上2011年),129巻1号99-163頁,同巻2号135-203頁,同巻3号153-227頁(以上2012年)〕の公刊準備段階において反映することができた(上記論文は,前年度科研費の成果を基礎に執筆されているものの,本研究課題の成果を反映する形で修正されている)。 また,本研究計画の第3段階である財政法分野に関する研究を前倒しするとともに,第76回・日本公法学会において「財政問題と時間軸~世代間衡平の観点から~」(第二部会,2011年10月9日)と題する研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において本年度は主として租税法分野の研究に特化する予定であったところ,租税法分野の基礎的調査は順調に進展し,次年度以降に実施予定である財政法分野の分析も部分的に行うことができた。なお,平成23年度末に予定していた海外での調査を平成24年春に変更したことから,海外での調査に関しては若干の遅れが生じているものの,その分,他の研究計画を前倒しして遂行していることから,研究全体としては概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,研究計画の第2段階「租税法の規範的再構築」での作業(理論的精緻化)を完了させるとともに,前年度の作業を基礎として,次に述べる研究目標の第3段階を遂行する。 第3段階では,現金主義的単年度予算が,現在の財政サービスの費用を予算指標に正確に反映できていない結果として,納税者および議員の認識が歪められ,財政赤字が加速しているところ,その解決策を探求する。具体的には,比較法研究の観点から,発生主義予算または複数年度予算を現実に活用している諸外国(イギリス,オーストラリア,ニュージーランド,アメリカ)における予算制度・決算制度について聞き取り調査及び文献調査の手法により研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初平成23年度末に予定していた海外(アメリカ)での文献調査・聞き取り調査を,平成24年春に変更したことから,平成24年度は(相対的に)海外での調査の比重が高まることになる。それに伴い,海外旅費および外国語文献・資料の入手に研究費を使用することが見込まれる。 また研究対象を租税法から財政法に本格的に拡大することに伴い,国内外における文献資料の収集を行うことになる。
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