2012 Fiscal Year Research-status Report
国家財政破綻回避のための法的枠組み~租税法と財政法の協働による世代間衡平の探求~
Project/Area Number |
23730022
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
神山 弘行 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00361452)
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Keywords | 租税法 / 財政法 / 法と経済学 / アメリカ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度は,昨年度に引き続き研究計画の第2段階にあたる「租税法の規範的再構築」を遂行するとともに,主として,研究計画の第3段階である「予算制度の規範的検討」を遂行した。また,研究計画の第4段階である「租税法と財政法の統合」を本格的に遂行するための導入的作業も進めた。 上記第2段階の研究成果の一部を,第37回信託法学会(2012年6月10日)において「信託税制の現状と課題」として報告し,信託法研究37号(2012年)にその成果を掲載した。また,別紙記載の通り,複数の論文を執筆・公刊した。 上記第3段階の研究として,具体的には,日本の現金主義的単年度予算が,現在の財政サービスの費用を予算指標に正確に反映できていない結果として,納税者および議員の認識が歪められ,財政赤字が加速しているとの問題意識から,現金主義という国庫の年度帰属の修正を図る発生主義予算や,単年度という時間枠組みの拡大を図る複数年度予算の活用を視野に入れつつ「予算制度の規範的検討」を進めた。そして,政府が将来財政負担を強いられる可能性がある「非明示的偶発債務」(法的な義務ではないが世論や政治的圧力により国庫負担が求められる可能性がある債務)に関する,より効率的な法的統制を構築することが肝要であるとの視座を得た。 災害時や不況時に,事後的な最後の手段として財政支援・公的支援が要求されることがあるところ,この「事後的な財政支援」と,「事前の手段」として有限責任法制(会社法)や倒産法制を最適に組み合わせることで,財政が直面する不確実性に対処することが可能であるとの知見を得た。この成果を,神山弘行「不確実性の下での財政と市場の役割―リスク再分配政策の観点からの導入的検討―」フィナンシャル・レビュー113号21-40頁(2013年3月)として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,主に研究計画の第2段階(租税法の規範的再構築)および第3段階(財政法の規範的分析)を遂行する予定であったところ,租税法の規範的再構築および財政法の規範的分析は順調に進展し,次年度に予定していた第4段階(租税法と財政法の統合)の導入的検討も行うことができた。なお,海外調査については若干の遅れが生じているものの,その分,他の研究計画を前倒しして遂行していることから,研究全体としては概して順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究計画の第3段階「財政法の規範的分析」を完了させるとともに,前年度までの作業を基礎として,研究計画の第4段階「租税法と財政法の統合」を遂行する。具体的には,比較法研究の観点から,イギリス,オーストラリア等の発生主義予算を導入している国における財政統制のあり方を調査分析することで,国家財政破綻回避のための具体的方策を検討することになる。 研究計画の最終年度であることから,研究成果を国内外で発表するとともに,論文の公刊を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた海外調査の一部を平成25年度に変更したことから,平成25年度は,海外調査の比重が当初の予定より高まることになる。それに伴い,海外旅費および外国語文献・資料の入手に研究費を使用することが見込まれる。 さらに,最終年度であることから,国内外で研究成果を積極的に公開・発表するために,国際シンポジウムや各種研究会に出席するための海外旅費・国内旅費等の支出が見込まれる。
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