2011 Fiscal Year Research-status Report
現代海洋法秩序の構造変化 ―海洋管理の潮流と海洋の自由の交錯―
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23730041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西本 健太郎 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 特任講師 (50600227)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際公法 / 国際法 / 海洋法 / 公海 / 大陸棚 / 排他的経済水域 / 海洋の自由 / 海洋の管理 |
Research Abstract |
本年度は「海洋の自由」と「海洋の管理」との交錯の具体的な場面として、主に3つの個別分野・事例の検討を行った。これら各論的な検討の成果は、次年度以降順次公表を進める予定である。 第1に、海洋科学調査と沿岸国の海洋資源に対する主権的権利の交錯をめぐる問題を検討した。国連海洋法条約がどのように科学的知見の増進のための海洋科学調査と沿岸国の資源に対する主権的権利を調整しているのかを検討した上で、条約上予定されている調整が最近の「海洋管理」への流れの中でどのように実現され、または修正を受けているのかを検討した。 第2に、バルト海におけるノルド・ストリームパイプラインの建設の例を中心として、海底パイプラインの敷設をめぐる国際法上の問題を、海底電線の場合との異同も含めて検討した。公海での海底電線及び海底パイプライン敷設の自由は、航行の自由の場合と異なって公海の一部分の恒常的な使用を伴う。こうした性質が「公海の自由」及び「海洋の管理」との関係において持つ意味について、大陸棚制度との調整や「妥当な考慮」が求められる範囲などとの関係において検討を行った。 第3に、各国の漁業・環境法令における船舶の通航への規制について資料の調査を行った。各国の立法例においては、規制の内容及びそもそも「漁業」や「環境」の名の下に規制する活動対象自体に相違がみられる。こうした相違は、排他的経済水域において沿岸国が有する権限の内容、ひいては排他的経済水域の本質に関する理解を背景に持つものと考えられる。次年度以降は、収集資料の分析を通じてこの点に関する実質的な検討に入ることを予定している。 以上と並行してさらに、「海洋の管理」をめぐる流れが現代海洋法秩序の構造に及ぼす影響を検討する上での前提を固めるために、現代海洋法秩序の成り立ちに関する検討を、これまで継続してきた研究に付け加える形で進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、以下の問題領域・係争点について各論的な検討を進める予定であった。(1)航行の自由との関係で、漁船の通航に関する規制、(2)漁業の自由との関係で、公海漁業に関する国際的規制枠組み、ワシントン条約や生物多様性条約と国連海洋法条約体制との関係をめぐる問題、(3)海洋科学調査の自由との関係で、海洋科学調査と沿岸国の海洋資源に対する主権的権利との交錯をめぐる問題、(4)海底ケーブル・パイプライン敷設の自由との関係で、海底ケーブル・パイプラインの敷設と沿岸国の海洋資源に対する主権的権利の交錯をめぐる問題。 これらのうち、(1)(3)(4)については順調に進展し、(2)についてはやや遅れている。他方で、当初の計画では次年度以降に予定していた通航に関する環境規制の問題を(1)とあわせて進めるすることができ、また最終年度に予定していた総論的な総括に必要な検討を、各論的な検討と平行して進めていくことにしたため、「研究の目的」との関係で全体的にみれば、おおむね順調に進展していると評価できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である本年度の研究はおおむね順調に進めることができたことから、今後も同様のペースで当初の研究計画通りに進めていきたいと考えている。他方で、本年度の研究成果は現時点で公表に至っていないため、今後は当該成果の論文・報告を通じた公表を進める。また、今後も各論の検討においては、個別の問題ごとに一定の区切りをつけて、それぞれ順次成果を公表していく形で進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の成果の公表が次年度にずれ込んだため、これとの関係で本年度の研究費に残余が生じた。この部分については、次年度における本年度の成果公表との関係での使用を予定している。その他については、当初の予定通りの使用を計画している。
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