2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代海洋法秩序の構造変化 ―海洋管理の潮流と海洋の自由の交錯―
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23730041
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西本 健太郎 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50600227)
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Keywords | 国際法 / 海洋法 / 海洋管理 / 海洋の自由 / 排他的経済水域 / 大陸棚 |
Research Abstract |
本研究では、海洋をめぐる諸問題への対応を「海洋管理」の文脈で把握する最近の潮流が、現行の海洋法秩序のあり方に変容をもたらすものであるのか否かを検討してきた。本年度は最終年度であり、近年の展開を理論的・歴史的に位置付ける作業を中心に検討を続け、概ね以下の結論に至った。 海洋の法秩序は歴史的に見た場合、沿岸国が権限を行使できる海域とできない海域に分けて沿岸国の権限を領域的に構成する考え方と、同一の海域で異なる海洋利用の共存しうることに着目して機能的に構成する考え方の二つの間で展開してきた。国連海洋法条約は、EEZにおいて後者の構成を採用することで沿岸国と海洋国の利害調整を図っている。しかし、異なる海洋利用間の共存という考え方は、広大な海域を巨視的に捉えるものであって、現実の特定の海域への適用には困難を伴うものである。 海洋利用の密度のさらなる増加、海洋監視技術の進展、海洋の生態系への関心の高まりといった要素は、海洋利用間のマクロ的な観念的共存からミクロ的な現実的利用調整へと問題設定を移行させており、「海洋の管理」をめぐる議論での「場所を基盤とした(place-based)アプローチ」の重視もこうした変化を反映している。そこでの具体的な調整方法は現在のところ国連海洋法条約の枠内のものに収まってはいるものの、領域的な利用調整は国連海洋法条約における機能的な構成と相容れない要素を持っており、航行を中心とした他国の利用を閉め出す形での領域的な「調整」の定着によって海洋秩序を変容させる可能性がある。 このように、近年の展開は直ちに国連海洋法条約の下での海洋法秩序から逸脱するものではないが、近年の「海洋管理」の文脈の下での議論には、国連海洋法条約が立脚する利用調整のあり方とは根本的に異質な契機が含まれており、将来的に既存の秩序を変容させる動きにつながる可能性を注視する必要がある。
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Research Products
(3 results)