2011 Fiscal Year Research-status Report
犯罪者の事後的な法適合的態度に対する量刑上の優遇制度についての総合研究
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23730073
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
野澤 充 神奈川大学, 法学部, 准教授 (70386811)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中止犯 / 王冠証人 / 量刑 / 自首 / 行為による悔悟 |
Research Abstract |
2011年上半期に論説「ドイツ刑法の量刑規定における新しい王冠証人規定の予備的考察」(神奈川法学43巻1号掲載)を出した。これは、2009年9月に施行されたドイツ刑法の改正法により、新たに量刑規定内に設けられた王冠証人規定について、その歴史的経緯や、規定内容について分析した上で、これまでの議論に基づく王冠証人制度の問題点の予備的検討を行うものである。この分析の結果、2009年成立のドイツの新しい王冠証人規定は、英米法にも見られないほどの広範囲の適用範囲をもつという点で、王冠証人規定としてもかなり特殊な内容をもつ規定であることが明らかとなった。それにより、もともと王冠証人制度について向けられていた批判以上の批判が向けられることになっているという議論状況もある程度示すことができた。また2012年2月に、初の単著となる『中止犯の理論的構造』を出版した。これは博士号請求論文を含むこれまでの中止犯関連論文をまとめたものである。犯罪論における犯罪行為後の犯罪からの後戻りの制度として従来から検討されてきた中止犯制度に関して、それが単純な酌量減軽事由の一種として規定されているものではなく、未遂犯処罰そのものから由来する必然的制度であることを明らかにした。これを踏まえつつ、そのさらなる発展形態としての「行為による悔悟制度(=既遂後の中止制度)」の検討についての示唆を本書の「補論」において行った。以上二つの研究により、犯罪論の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」の検討(とくに「行為による悔悟」制度の研究)と、刑罰論の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」の検討(とくに日本を含む東アジア特有の制度としての「自首」制度の研究)のための足がかりとなる基礎研究が完了したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目標の中心的な検討対象としては、刑罰論(量刑論)の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」の優遇を中心に考える予定であった。この点の一端については、既に論説「ドイツ刑法の量刑規定における新しい王冠証人規定の予備的考察」において、ドイツの王冠証人規定に対する分析という形で明らかにすることができ、後は日本の自首規定との対比をすることを予定している。また犯罪論の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」の優遇についても著書を出版することを達成したので、この犯罪論からのアプローチについては、今後はさらなる発展形態としての「行為による悔悟」制度の検討をする段階に来たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
残りの研究対象領域である「自首」制度および「行為による悔悟」制度について、制度趣旨を検討した上で、これまで検討した「犯罪者の事後的な法適合的態度」への優遇制度に共通する考え方を一般化し、さらなる立法論へと結びつけることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「行為による悔悟」制度は、日本にはあまりそれに類する規定が見られないものであるが、ドイツ刑法には多くの立法例が見られる。このため、資料収集や実務運用の調査の必要から、ドイツに赴く必要がある。また、「自首」制度は中国法に由来する制度であり、中国法制史関連の文献を集めることが必要である。この資料収集のための渡航と法制史文献の購入、および研究成果の発表のための研究会出張旅費が、研究費の使途の中心となる予定である。
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