2012 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪者の事後的な法適合的態度に対する量刑上の優遇制度についての総合研究
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23730073
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 充 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70386811)
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Keywords | 中止犯 / 中止未遂 / 王冠証人 / 量刑 / 自首 / 行為による悔悟 |
Research Abstract |
2011年上半期に論説「ドイツ刑法の量刑規定における新しい王冠証人規定の予備的考察」(神奈川法学43巻1号掲載)を出した。これは、2009年9月に施行されたドイツ刑法の改正法により、新たに量刑規定内に設けられた王冠証人規定について、その歴史的経緯や、規定内容について分析した上で、これまでの議論に基づく王冠証人制度の問題点の予備的検討を行うものである。この分析の結果、2009年成立のドイツの新しい王冠証人規定は、英米法にも見られないほどの広範囲の適用範囲をもつという点で、王冠証人規定としてもかなり特殊な内容をもつ規定であり、それによりもともと王冠証人制度に向けられていた批判以上の批判が向けられているという議論状況も示すことができた。さらにこの論説に基づいて、2013年3月に日本刑法学会九州部会第112例会にて「ドイツ刑法における新しい王冠証人規定について」という報告を行い、取調べの可視化と対応する形で日本でも導入が検討されつつあるとされる王冠証人制度に関して、慎重な姿勢を示すべきとの示唆を行った。また2012年2月に、初の単著となる『中止犯の理論的構造』を出版した。これにより犯罪行為後の犯罪からの後戻りの制度として従来から検討されてきた中止犯制度に関して、それが単純な酌量減軽事由の一種ではなく、未遂犯処罰そのものから由来する必然的制度であることを明らかにした。これを踏まえつつ、そのさらなる発展形態としての「行為による悔悟制度(=既遂後の中止制度)」の検討についての示唆を本書の「補論」において行った。今後は犯罪論の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」(とくに「行為による悔悟」制度)の検討と、刑罰論の側からの「犯罪者の事後的な法適合的態度」(とくに日本を含む東アジア特有の制度としての「自首」制度)の検討について、具体的な形で進めていく必要があると考えている。
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Research Products
(3 results)