2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730074
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
嘉門 優 立命館大学, 法学部, 准教授 (40407169)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ドイツ / 危険犯 |
Research Abstract |
刑法上、危険、リスクといった程度も種類も異なるものを「危険犯」概念のなかにまとめられてしまっている状況が問題であると考える。そのため、判例・現行法の分析、批判的検討を通じ、より詳細な、抽象的危険犯の下位カテゴリーを形成する必要があると考える。そこで、本年度は判例の分析を行い、その成果を論文として公表した。判例は従来、放火罪の成否に関し、危険の擬制をするとの判断を示していた(大判明治44年4月24日刑録17輯655頁)。しかし、前述のとおり、現実的な危険が一切発生しておらず、行為と法益との関係性がない場合にまで処罰することに対しては批判が強い。実際に、判例上(旧)あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法が禁止していた、業として行う医業類似行為について「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局」されるものとしており(最大判昭和35年1月27日刑集14巻1号33頁)、判例も、抽象的危険犯にも「実質的な危険」を要求するという解釈を排斥していないとみられる。しかし、このように抽象的危険犯にも「実質的な危険」を要求するとしても、判例においてとらえられている「危険」の内実は明らかではない。公表論文において検討対象として、国家公務員の政治行為禁止処罰規定について、判例上、「行政の中立的運営、公務員の政治的中立性」に対する抽象的危険犯であると理解している。この判例の理解の問題点として、あまりにも抽象的な法益理解であることをはじめに指摘した。さらに、本規定において処罰対象とされている「配布行為」についての立法者による一般的・類型的危険の把握方法についても問題があること、加えて、実際の事案に対する裁判所の危険の認定についての問題点にも言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国家公務員法における判例実務の問題性については公表論文を提出したものの、法益が抽象的である点や、危険内容が不十分であるといった問題点の指摘にいまだとどまっており、研究目的として掲げた、判例・現行法の全体的な分析には踏み込めていない。また、従来の判例実務から、現在の判例実務の変化などといった検討もいまだできていない。本研究の特色は、従来の研究が抽象的危険犯の限界について総論的な提示にとどまっていたことと比較し、判例実務・現行法上の規定の分析による、抽象的危険犯の分類を通じてその基準を見出すという、いわば「下からの基準提示」を目指している点であった。しかし本年度は、国家公務員法や一部の特別法の検討のみに終始し、ほかの法律、とくに刑法典上の規定の研究は進まなかった。本研究では、多くの規定の分析により、抽象的危険犯のさらなる詳細な分類とそれぞれの限界を見出し、刑法的介入の限界点を見出すための第一歩とするために、次年度はより広い視野で、判例実務の検討を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により示された、判例実務の問題点を踏まえて、問題を2点に分類して検討を進めることにする。第一は、裁判所における行為者への危険犯規定適用場面における危険把握の問題性、第二は、立法者による一般的・類型的な危険把握の手法の問題性、それぞれについて分けて検討を進める必要がある。 前者については本年度も引き続き、判例実務の検討を進める。とくに前述のように、より多くの規定分析が必要となるため、本年度はほかの研究者が対象としてきた刑法典上の規定のみならず、より広い範囲の特別法上の規定も対象に入れ、検討対象を広げていく予定である。それと並行して、第二の問題点については、ドイツにおける近親相姦判例を手がかりに、立法者による一般的・類型的な危険把握の手法について分析し、その問題点を明らかにする。この第二の点については、法益論との関係でドイツでは多くの文献があり、より詳細な分析に踏み込むことが可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第二の問題点とかかわって、ドイツにおける判例分析のため、ドイツに渡航し情報収集に努める。とくに、ドイツにおける近親相姦規定につき、合憲判決が出され、さらには、欧州人権裁判所においてもそれを追認する判決が出された。この判決は、立法者による一般的・類型的危険理解にかかわる重大な問題であり、現地において資料収集やインタビューを行い、検討を進めていく予定である。そのほかにも、危険犯についてのより実務的な議論についてもドイツの議論状況の把握に努める。以上の理由からドイツへの渡航費用や宿泊費用として予算を使用する予定である。 さらに本年度に引き続いて、危険犯検討のために必要な文献の購入を行う。とくに、近親相姦判決にかかわるドイツにおける資料が未収集であり、ほかにも新たな危険犯分析のための資料、とくに特別刑法にかかわる分野について収集する予定である。加えて、論文作成のために必要な機器類のうちそろえていないものや、故障しているものについて(現在予定しているのはパソコンディスプレイなど)購入する予定である。
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Research Products
(3 results)