2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730074
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
嘉門 優 立命館大学, 法学部, 准教授 (40407169)
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Keywords | 法益論 / 危険犯 / ドイツ刑法 / 道徳処罰 / 判例研究 / 国公法上の政治的行為の処罰 |
Research Abstract |
現在では刑事立法の活性化状況と言われるほど、刑事立法が数多く成立するに至っている。刑法的介入の限界とはどこにあるのか。この問題は古典的、かつ基本的な刑法上の問題であると同時に、近年の刑事立法の活性化状況に鑑みると、さらなる重要な課題となっていることは否定できない。本研究では、まずは、判例上、「危険」がどのようにとらえられているかを検討するために、これまでの判例実務における危険犯の扱いについて検討した。また、最近の事例として、国公法上の政治的行為の禁止、さらに、行政書士法上規制についても具体的に検討した。この検討を通じて、刑法上の危険犯理論が判例実務に生かされていないことを痛感し、いかにして今後、この理論が実務に影響を与えうるかという観点から考察せねばならないことが明らかとなった。 そのような観点から、ドイツ刑法の現状についても検討したが、その素材としてとくに、実体は道徳違反の処罰に見えるが、危険処罰としてとらえられてきた、近親相姦処罰について検討した。ドイツ刑法においても、「危険」概念のあいまいさ、さらには、法益論の問題性が長らく指摘されてきており、ドイツ憲法裁判所も法益論の採用を見送っている現状にある。この検討を通じて、当初挙げていた「分類・分析」による危険犯理論の精緻化のみならず、その背景としての理論、とくに憲法理論との関係性が明らかにされてこなかったことが問題視されねばならないことが明らかになった。本論文では、憲法理論との関係の分析について方向性のみを指摘するにとどまったが、今後、その精緻な理論化を進める予定である。 またそれに加えて、危険犯の分類・分析についても、公表した論文に加えて、ドイツとの比較検討を行っており、近日中の公表を予定している。
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Research Products
(8 results)