2012 Fiscal Year Annual Research Report
企業買収における株主間の利害調整の法的メカニズムの分析
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23730090
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 秀総 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80436500)
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Keywords | 民事法 / 企業買収 / 会社法 / 株式買取請求権 / M&A |
Research Abstract |
本研究は、企業買収における株主間の利害調整の法的メカニズムのうち、現在の日本において最も重要な株式買取請求権を分析した。その結果、株式買取請求権は、スクリーニング機能を果たそうとしていると理解することによって、たとえば、合併等の一定の場合にのみ株式買取請求権が認められるのは、会社のリスクに対して重大な変化をもたらす類型だからである、というように、株式買取請求権の構造の多くを説明できることを明らかにした。 また、株式買取請求権と支配株主・取締役の忠実義務違反の損害賠償とは、併存できる関係であることも明らかになった。すなわち、株式買取請求権は株主の意思決定が価値上昇型となるように保障しようとするのに対して、忠実義務は価値最大化を目指すことを保障しようとするものとなり得る点で異なる。また、両者は、支配株主・取締役に適切な行動を行わせる動機付けのメカニズムとしての有効性も異なることも明らかにした。 会社が債務超過であることを買取価格算定の考慮要素とするべきかという問題については、①非効率的な企業再編が実行されることを防ぐというスクリーニング機能を重視するのであれば、債務超過であることについて特段の考慮をする必要はなく、②逆に債務超過の状況において企業を再建するために有益な投資を行わせることを重視するのであれば、債務超過であることを特別扱いして株式買取請求権の買取価格をゼロとすることが合理的であるという関係にあることを明らかにした。 公開買付けの強圧性の問題を考慮して買取価格の算定を行うべきかという問題については、本来的には公開買付規制で対応するべきで、株式買取請求権で対応することは本来は不必要なものではあるものの、公開買付規制での対応が不十分である状況においては、買取価格を公開買付価格と同額とする解釈が一応の解決になり得ることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)