2013 Fiscal Year Research-status Report
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23730104
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
栗原 由紀子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (30405740)
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Keywords | 契約締結上の過失 / 第三者責任論 / 第三者のための保護効を伴う契約 / 契約責任の人的拡大 |
Research Abstract |
本年度は、わが民法における契約関係にない第三者に契約責任を追及しうる可能性を検討するため、前年度に引き続きシンジケートローンにおけるアレンジャーの情報提供義務について考察した。とりわけ、新たに公表された裁判例である借入人詐欺が行われた場合おけるアレンジャーの責任を分析し、契約関係にないアレンジャーとその他の金融機関との間において、不法行為責任構成以外の責任構成の妥当性を検討した。 また、契約責任の人的拡大の是非を検討すべく、ドイツにおいて提唱されるいわゆる「第三者責任論(Dritthaftung)について考察すべく、2002年に施行されたドイツ新債務法311条3項に関連する判例等の蒐集・分析を行ってきた。その結果、契約交渉段階の過失に基づいて契約外の第三者が責任を負うべき要件を以下のように確認できた。 第一に、契約締結に際して、第三者自身に固有の経済的利益を有するという事情が必要である。これは、例えば自身が取締役を務める会社の代理人として契約締結に関与するような、第三者自身が取引上の経済的利益の担い手としてみなされうる場合である。つまり、第三者がその取引上いわば「自分自身の利益のため」として行動していなければならない。第二に、こうした事情がない場合でも、あるいは、契約相手に特別な個人的信頼を惹起するような事情があればその第三者に責任を負わしめることができる。しかし、「個人的信頼の惹起」は、単に、第三者が当該取引の専門家だから、といった彼の職業や地位に基づいて信頼されるというわけではない。むしろ、彼が持てる専門知識でもって個人的に契約交渉にあたって適正な行動をすることを、相手方に保証しているという事情が必要である。このような第三者の自身への信頼保証引受けが、契約締結という結果を導くからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年度に研究代表者が10か月ほど産前後休暇並びに育児休暇を取得した影響により、計画にかなりの遅れをきたしてしまった。実際に、研究活度を開始したのは平成24年度4月からであり、特に、ドイツ法関連の資料蒐集がおよび分析が当初計画から約一年分遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、本来であれば本年度終了予定であったが、平成23年度に取得した育児休暇等の影響により、約一年分、当初計画より遅れを生じていることから、研究期間延長を申請し、これが受理された。今後は遅れている分を取り戻すべく、引き続きドイツ法における契約責任拡大事例を蒐集・分析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画が当初計画から、約一年分遅れてしまったため。 ベックオンラインデータベース年間利用料、資料収集ないし研究報告のための旅費(主に 東京都内)、及び資料等の複写費用、ドイツ債務法関連書籍購入代金
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