2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730104
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
栗原 由紀子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (30405740)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 第三者責任論 / 第三者のための保護を伴う契約 / 契約責任の拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度から引き続き、契約外の第三者に契約責任を認めるドイツ法における法理「第三者責任(Dritthaftung)」についての考察を進めた。前年度は、BGB311条3項関連の判例等の分析から、契約外の第三者が契約責任を負うべき要件の確認をしたが、本年度は、その第一要件である「第三者自身に固有の経済的利益を有する事情」について、これがいかなる内容で、いかなる場面をいうのかを明らかにするべく判例の蒐集と分析を行ってきた。判例法上、こうした「第三者自身に固有の経済的利益を有する事情」があると考えられるのは、代理人が本人に代わって契約交渉してた際に、何らかの過失より相手方に損失を与えた場合である。この場合に、本人ではなく、実際に過失ある代理人自身に対して契約締結上の過失責任を追及しうるか否かが争われた。つまり、いかなる事情の場合に、本人ではなく、代理人が契約締結上の過失責任を負うのか、この点が問題となった判例を中心に検討してきた。 その結果、以下のことが明らかになった。「第三者自身に固有の経済的利益を有する事情」があるというためには、「第三者が契約交渉に際して経済的にあたかも自己のためであるかのよう行動していたか」、つまり、「第三者が契約交渉の目的に対して直接的経済的利益を有していたか」という点が、判断の際に重視される要素のようである。しかしながら、そのためには「第三者」が「代理人」たる地位にある必要がある。加えて、判例理論は代理人が契約交渉の際に得る「手数料」については、彼の得る直接的経済利益ではないとしている。したがって、代理人に第三者責任を問うには、その代理人が、手数料ではない、なんらかの利益を有しているということが必要ということになる。
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