2011 Fiscal Year Research-status Report
中国のスポーツと社会階層に関する調査―体育系学校の学歴取得と職業選択に着目して
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23730498
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池本 淳一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助手 (90586778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スポーツ / 中国 / 武術 / 体育学校 / 社会階層 / 格差 / 戸籍 |
Research Abstract |
2011年12月25日(日)~2012年1月8日(日)まで、中国・重慶市において体育系学校の生徒に対する質問紙調査を実施し、武術学校225、体育学校131、芸術学校656、普通学校702、合計1714の有効サンプルを得た。これらのうち、普通中学及び普通高校以外は全数調査を行い、当日出席者の全員から回答を得ることができた。普通中学/高校は当校の教師に質問紙の配布を依頼し、各学年2~3クラスに配布してもらい、後日回収した。 質問紙では、本人及び保護者の出身地・戸籍、本人の出生時から現在までの移住経験・同居経験、保護者の移動経験・出稼ぎ地、入学前における学校知識と訓練経験、将来および老後の移住希望地域、進学希望および就職希望、保護者の現職・学歴・党籍の有無・収入等に関する質問項目を織り込み、本人及び保護者の移住状況及び階層的位置づけと、各学校類型との関係を明らかにしていった。 結果、武術学校と体育学校に農村戸籍・農村出身者が多く、芸術学校と普通学校に都市戸籍・都市出身者が多いといった、明確な出身地域差が確認された。また生徒の移住回数、保護者の出稼ぎ率も武術・体育が多く、普通・芸術が少ないといった、明確な流動性の差が確認された。加えて保護者の収入・階層も武術・体育が低く、普通・芸術が高いといった、明確な階層差が確認された。また普通大学進学志向も芸術・普通が高く、武術・体育が低いといった、明確な教育アスピレーションの差が確認された。 これらの結果より、重慶市における武術・体育学校と普通・芸術学校の間には、出身地、流動性、階層、アスピレーションにおいて明確な差があり、これらの学校類型と社会階層との間の結びつきが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、現代中国においてスポーツが階層形成及び階層移動に果たす役割を地域比較をもちいて明らかにすることであった。 現段階は2011年12月末~翌年1月初に実施した重慶市の調査結果の集計が終了し、そのデータをもとに論文を作成している状況である。当初は重慶市および上海市の調査結果が出てから論文としてまとめる予定であったが、現段階で1700サンプル(当初の予定では両市あわせて2400サンプル)を得ることができ、また各項目の集計結果も興味深いものとなっていたため、先に重慶市の結果をまとめることで、重慶市の地域研究としても十分な水準の論文が作成可能であると判断した。 これらの結果と進捗状況から、調査の質・量ともに計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
重慶市の調査結果を用いて、本年度中に、2本の論文を執筆予定である。 また2012年12月末に上海市の調査を行う。上海市調査での目標サンプル数も重慶市と同様、1700とする。この上海調査の集計結果は2013年度前半に論文の形で発表し、2013年度後半には重慶・上海調査の結果を用いて、内陸・沿岸都市の比較を中心とした論文を作成する。さらにこれらの成果を問うために、最終年度には調査に協力していただいた中国側研究者を招いて、ともに国内学会にて口頭発表を行い、また研究代表者単独で国際学会にて口頭発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、内陸部と沿岸部の都市にそれぞれ二回、調査に出向き、目標サンプル数を獲得する予定であった。しかし震災による予算削減通知があり、二回分の調査費用を確保することができないことが予想された。そこで夏に計画していた一回目の調査をとりやめ、冬に計画していた二回目の調査期間のみ実施することにした。 結果的には調査期間を予定より長くとり、調査対象校への連絡を十分にすることで、一回のみの調査で目標を大幅に上回るサンプル数が獲得できた。後に予算削減が取りやめになったため、その分の費用を次年度に回すことが可能となった。これらの費用を用いて、次年度以降に当初の予定になかった研究代表者による国際学会での発表を行うつもりである。 なお本年度の調査については、この重慶調査のノウハウをいかして、2012年12月末に上海市にて調査を行う。ただし上海市の物価と人件費は重慶市より高額であり、また現地の調査協力者である西南大学・陳宝強副教授と調査アシスタントの方々に上海市まで来てもらう費用がプラスされるため、上海調査では当初の申請額通りの費用を設定する予定である。
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