2012 Fiscal Year Annual Research Report
公的扶助制度における就労支援体制構築への視座-フランスを事例として-
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23730517
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Research Institution | Toba National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
小澤 裕香 鳥羽商船高等専門学校, 一般教育科, 助教 (00582032)
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Keywords | フランス / 参入支援 / ワークフェア / 積極的労働市場政策 / 福祉 / 失業 / 貧困 / 社会的排除 |
Research Abstract |
本年度は、RSAになって就労をより強調した参入支援政策の方向性が、行政上どのように運営され展開されているのかを、参入支援を担当する機関(参入支援機関とその指導相談員)の社会的連携に注目し、その実態を明らかにした。そのために、各参入支援機関の指導相談員であるソーシャルワーカー、就労支援員そして責任者へのリアリングを実施した。 ヒアリング調査によって明らかになったことは、以下のことである。 RSA受給者は往々にして複合的に問題を抱えている場合が多く、雇用をめざすまでには複数の社会的なブレーキ(住宅や多重債務、託児所の問題等の)を取り除いていかなければならない。社会問題の解決から就労支援への移行といった段階的な支援を可能にするために、第一に、受給者の抱えている困難の多様性に応じて、参入支援機関を、①社会問題対応機関、②就労支援担当機関、③またその両者を扱える中間的機関といった分類をもうけて設置し、受給者を受け入れている。参入支援機関は具体的に、各福祉行政部署だけでは対応できず、非営利団体、国の機関の協力によっている。第二に、前述の参入支援機関の代表者からなるチームが連携をとることで、個人の状況の変化に対応し他の参入機関への移行の経路を保障し就労へと促している。また、このチームは、雇用支援事業の実施・評価・見直しについて、参入支援機関の現場の声を政策に反映させるツールとしても機能しており、労働需給の調整役ともなっている。 以上の検討を踏まえ、RSAにおける積極的労働市場政策の推進は、参入支援機関の連携が織りなす多様性機能と調整機能によって支えられていると結論づけられる。 このような現地調査を通して得られた知見は、学会報告によって広く共有された(「RSA制度を支える連携体制の分析-パリ参入支援機関の事例から」第126回社会政策学会春季大会、2013年5月、青山学院大学)。
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