2012 Fiscal Year Research-status Report
公的扶助ケースワーカーの組織環境に関する日米瑞の国際比較研究
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23730534
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
木下 武徳 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20382468)
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Keywords | アメリカ / スウェーデン / 日本 / ケースワーク / 公的扶助 / 組織環境 / 国際比較 |
Research Abstract |
2012年度の研究目的は、アメリカ、スウェーデン、日本における福祉事務所のケースワーカー、特にアメリカと日本についての具体的な調査を実施することであった。アメリカでは、2013年3月にウィスコンシン州とカリフォルニア州に訪問し、不況下における福祉事務所およびケースワーカーの現状や課題についてインタビュー調査することができた。特に、アメリカでは、専門職採用がなされていないが、雇用慣行からケースワーカーの専従で採用されているため、対人援助職の経験の蓄積ができることが日本と大きな違いがあることが判明した。 2012年度は日本の生活保護について、私の住む札幌市における白石区姉妹孤立死事件、生活保護の不正受給問題、生活保護基準や生活困窮者支援の議論などが大きく取り上げられ、かなり日本の政策論議を追う必要に追われた。そのなかで、本研究の視点から、2012年10月20日日本社会福祉学会第60回秋季大会にて「生活保護におけるケースワーカーと利用者の対人関係-生活保護利用者に対する調査から-」を報告し、日本におけるケースワーカーと生活保護利用者の関係において信頼関係の構築が課題となることを明らかにした。また、2012年9月29日の第5回貧困研究会研究大会では、大会基調講演として、「福祉事務所と民間福祉の役割と協働~アメリカでの議論を踏まえて~」を講演し、日本とアメリカにおける福祉事務所の役割を、ケースワークの役割や民間委託の視点から比較考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、先述のように、日本の生活保護制度の改革の動きが大きく、とりわけ、厚生労働省の社会保障審議会の生活困窮者生活支援部会の議論は、福祉事務所のあり方そのものに大きく改革を行う可能性があり、この議論の整理と考察に時間をかけた。その結果、厚生労働省の設置する予定の「総合的な相談支援センター」は、民営化された第二福祉事務所としての役割を果たすことになるために、現在の福祉事務所との役割分担、特に福祉事務所のケースワーカーの資格審査・現金給付機能とケースワーク機能との整理をする必要があることが明らかになった。特に、現・福祉事務所のケースワーカーが資格審査・現金給付機能に役割を特化するとしても、最初のゲートキーパーとして生活問題のアセスメント能力、それを可能にする面接技術、必要な様々な社会資源につなぐための関係知識等が求められることを明らかにした。 また、アメリカのケースワーカーの調査研究については、2013年3月に現地調査ができたが、多くのケースワーカーへの調査ができず、5人程度にとどまった。これらのインタビューのテープお越し等の整理については、これから行い、分析を進めていく予定である。スウェーデンの福祉事務所の分析については、やや遅れ気味である。スウェーデンでは、もともと専門職裁量が高く、マニュアルはあまり重視されていなく、マニュアル自体が少ないようである。スウェーデン語で書かれているために、現地の関係者に協力を求めながら内容を理解していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
スウェーデンについてはやはり言語の問題もあり、やや研究が遅れ気味であるが、スウェーデンの公的扶助に関する英語の文献もある程度収集ができてきたので、昨年度の現地調査と合わせて、論文の執筆を進めたい。スウェーデン語のマニュアルの分析については、現地の関係者に協力を求めて進めていきたい。アメリカについては、先述のように、2012年度に行ったインタビュー調査の整理を進めて、特にデータ収集が多くできたウィスコンシン州のケースワーカーの状況について執筆を進めたい。ロサンゼルスの福祉事務所については、2012年度にインタビューしたカウンティ政府の幹部に依頼し、さらに調査協力をしてもらえる現場のケースワーカーを募り、インタビューをすすめたい。日本のケースワーカーの環境については、私もメンバーになった公的扶助研究会の関係者に協力を求めて調査を実施していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定の「当該年度の所要額(B)」から実際の「当該年度の実支出額(A)」を差し引くと「63円」分の差が生じたが、金額が極めて少なく、誤差の範囲でほぼ研究計画通りに支出できたと考えている。使途としては、63円だけでは支出はほとんど無理であるので、次年度の研究費のたとえば図書購入費の一部等に組み入れるなどして支出したい。
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Research Products
(3 results)