2011 Fiscal Year Research-status Report
脱ホームレス後の生活に関する実証的研究―「再路上化」防止のプロセスを中心に―
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23730567
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
山内 太郎 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 講師 (90369223)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ホームレス / 脱路上 / 貧困 |
Research Abstract |
本研究は「脱路上」を果たした元ホームレス者の生活実態と彼らに対する支援の現状及び課題について特に「再路上化」の問題と関わらせて検討することを目的としている。平成23年度は調査期間と位置づけて以下のように状況の把握に努めた。(1)札幌市内におけるホームレス支援団体に呼び掛けて意見交換会を開催し、情報共有のネットワークを構築した。このネットワークでは、例えば就労をしている人や生活保護受給者より(低額の)年金受給者の方が生活状況の把握がより困難であるといった報告がなされるなど、現在も研究を進める上で貴重な情報を得る場となっている。(2)行政から委託を受けた札幌市内のホームレス(路上生活者)の聞き取り調査に参加し、全国に比較した札幌の状況をある程度把握できた。それは(1)テントや小屋などを設営したいわゆる定住型の生活形態は確認されていない(2)特に冬期は収入のある仕事をしている人が少ない(3)建設関係に従事した経験を持つ人が少ない(4)札幌市出身者が多い(居住地の移動がない)(5)健康面の不調を訴える人が多い、といった点である。こうした特徴が脱路上あるいは再路上と相関があるかは今後の検討課題であるが、札幌市のホームレス事情が全国的に見てかなり特徴的であることは指摘できる。(3)計画では脱路上を果たした元ホームレス者への聞き取り調査も行う予定であったが、時間の調整がつかず次年度へ持ち越すこととなった。ただ調査の実施に先立って広島県生活と健康を守る会連合会(以下、生健会)の会員調査への参加と生健会役員との交流をすることができ、次年度につながる有意義な示唆を受けた。すなわちそれは貧困・低所得状態にある人が、自分の状況を客観的に捉えて主体的に反貧困などの運動に参加する動機づけを解明すること、そうした機運をいかにして生み出すかという試みを検討することである。それは再路上化の防止にもつながる論点であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた聞き取り調査を実施できずに年度を終えているが、その要因は担当になった校務に予想以上に時間を割く必要があったためである。ただし、この間調査対象者となるであろう方々とは丁寧に信頼関係を構築してきた。したがって調査自体の実施は早急に始めることができるため遅れていた分を取り戻すことは難しくないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施できなかった聞き取り調査を早急に実施して脱路上後の生活実態の解明に取り組みたい。また、当初の計画にあった、支援団体が行っている具体的な支援の内容などについて主に参与観察を通じて整理、分析し、再路上化防止に向けた支援の現状と課題を明らかにしていきたいと考えている。研究計画の段階で聞き取り調査が遅れることは予想される困難として挙げており、平成24年度の計画ではそれを見越して比較的余裕をもった計画を立てている。本研究で得られた知見は、関連する学会で報告して研究の方法や成果についての妥当性を再度検討する。さらにこれらの作業を通じた後に、本研究の成果について論文等を執筆し公開する予定である。この他、これまでの研究活動でつながることのできた支援団体等との良好な関係を継続させて、実践に根差したより精緻な研究を進めるための土壌を涵養するとともに、研究活動を通じて支援団体等のさらなる飛躍(その延長としてのホームレス状態に苦しむ人がいなくなること)に寄与したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、研究に関連する図書費及び調査活動にかかる旅費や消耗品費、学会等への参加のための旅費として使用する予定である。
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