2012 Fiscal Year Annual Research Report
脱ホームレス後の生活に関する実証的研究―「再路上化」防止のプロセスを中心に―
Project/Area Number |
23730567
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
山内 太郎 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 講師 (90369223)
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Keywords | ホームレス / 脱路上 / 貧困 |
Research Abstract |
本研究の目的は「脱路上」を果たした元ホームレス者の生活状況を把握すること、そして必要となる支援について主に「再路上化」の防止に焦点を当てて検討することである。最終年度となった本年度は、まず前年度の積み残しとなっていた二つの聞き取り調査を実施した。すなわち「再路上化」したホームレス者及び「脱路上」を果たした元ホームレス者への聞き取りである。 前者の調査からは居住歴の中でも「居候」をしていた期間に注目する必要があることが示唆された。それはいわゆる売春宿に「囲われた」状況であったり、元路上仲間のアパートを探し出し、半ば「脅して」寝泊まりさせてもらっているといった状況であることなど、再路上に至る過程には多様で複雑な事情があり、支援の入り込む隙間をつくること自体が難しい。本人が居候先とどのような関係にあるのか、その過程を含めた実態を明らかにする必要がある。 また、後者については、調査対象者の選定が難航したため、当初のねらいである生活状況の把握には課題が残ったが、脱路上後に本人が取り結ぶ人間関係の脆弱さが再路上の危機と関係していることが示唆された。ただし、調査を通じた状況の把握が期間として短いこともあり、今後さらに継続したパネル調査的な手法で状況を見ていく必要があると考えている。 また、本年度は脱路上後の支援をしている民間団体への参与観察を通じた支援の現状と課題を探ることとしていたが、経済的な面についての取り組み(就労や年金・生保の申請等)だけでなく、本人の人間関係の広がりについての取り組みが必要であると思われた。 これらの調査から明らかになったことは、個別的な事例をより長期的なスパンで明らかにして実態とらえる研究の必要性である。それは近年議論されているパーソナルサポートサービス(PSS)の有効性を検証することにもつながると思われる。
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