2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730728
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 一平 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (90600867)
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Keywords | 知識 / 社会化 / エスノメソドロジー / 会話分析 |
Research Abstract |
平成24年度には、本研究プロジェクトが社会化現象に問いを差し向けるところから出発したものであることを鑑み、さまざまな知識類型のうちでも特に人びとの行為の制御に関わる「規範」の獲得場面に焦点を当てたうえで、以下のように研究を遂行した。[1]首都圏に立地する某公立小学校において定期的に調査を実施した。[2]調査で得られたデータを利用し、研究成果のアウトプットの一貫として東京大学大学院教育学研究科への博士学位請求論文を執筆した。以上2点をより具体的に述べれば、以下のようになる。 [1]調査は、平成23年度にフィールド・エントリーを完了し、またすでに予備調査にもご協力いただいていた小学校において実施された。本年度においては特に児童たちの社会化場面に研究の焦点を当てる都合から、上記小学校のなかでも第1学年学級を主たるフィールドとして設定した。調査は概ね次のような内容であった。上記小学校におよそ月に1度のペースで訪問し(計11回訪問した)、基本的には各クラスの授業にランダムに参与しながら、その場面の録画・録音・筆記記録を収集した。本研究の主たるデータは授業場面の映像記録であるが、この映像記録は2台のビデオカメラを用い、1台は三脚を使用して教室後方に設置、もう1台は調査者が手持ちして適宜移動しながら撮影されたものである。 [2]本研究プロジェクトによって得られた成果が元となった上記博士学位請求論文は「社会化現象の経験的記述――その過程・境界・達成を対象領域として」と題されている。この論文はタイトル通り社会化現象をその対象としたものであり、全8章から構成されているが、このうち第6・7章に本研究プロジェクトで得られたデータ(第6章:H23年度に実施した予備調査で得られたデータ、第7章:[1]の調査で得られたデータ)が用いられている。当該論文はすでに提出・受理されており、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成24年度には、[1]H23年度にフィールド・エントリーを済ませた小学校において授業場面の録音・録画・筆記記録を行うことでデータを収集し、[2]取得したデータをもとに授業を実施した教員の方々とのデータセッションおよび教員の方々へのインタビューを行うことでデータへの理解を深め、[3]映像データの文字起こしと分析を進めること、以上3点の実施を予定していた。このうち、[1]に関しては当初の予定通り順調にデータの収集を進めることができた。[2]に関しては教員諸氏があまりにも多忙であったことに配慮し、データセッションというかたちはとらずインフォーマルインタビューというかたちでデータへの理解を補完した。[3]に関しては、単に分析を進めるだけでなくその成果を元に博士学位論文を執筆・提出することが出来た。総じて当初の計画は順調に進捗しており、「(2)おおむね順調に進展している。」との評価に値するように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究プログラムの最終年度となる平成25年度には、今年度に引き続き[1]フィールド先の小学校でのデータ収集を継続し、[2]取得された映像データの文字起こしおよびその分析を順次進めていき、さらに[3]分析結果の積極的なアウトプットを行なっていくことを予定している。より具体的には、[1]については本年度まで主要な観察対象としてきた第1学年から比較して、その授業内容の構成が変更・拡張される第2学年を主たる観察対象とする予定である。また[3]については、すでに"Technologies and Techniques"をテーマとした国際エスノメソドロジー・会話分析学会(The International Institute for Ethnomethodology and Conversation Analysis:IIEMCA)の2013年度大会に口頭報告のエントリーを済ませている。IIEMCAでの口頭報告に加え、平成25年度には日本社会学会や日本教育社会学会をはじめとした各種学会紀要への論文投稿も行なっていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費はすべて、上記「今後の研究の推進方策」における[3]についてのみ支出を予定している。具体的には、8月5日~8月13日の日程で開催されるIIEMCAの2013年度大会(於ウィルフリッド・ローリエ大学:カナダ、オンタリオ州ウォータールー市)に参加し、研究成果を報告するための交通費・滞在費に支出する予定である。当初の計画では、研究成果のアウトプットに必要な書籍類を補充するために支出する予定であったが、上記学会報告の事前審査に通ったため、当初の計画を以上のように変更した次第である。
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