2012 Fiscal Year Research-status Report
1950年代学校ガバナンス構造の形成および定着過程に関する地域実証的研究
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23730741
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
石井 拓児 愛知教育大学, その他部局等, 准教授 (60345874)
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Keywords | 学校ガバナンス / 子どもの貧困 / 学校づくり / 学校財政 / 学校白書運動 |
Research Abstract |
平成24年度においては、1950年代における我が国の学校ガバナンス構造の形成過程において、とくに学校財政の仕組みに着目をし、その展開の様相を地域団体の政治的パワーの変動との関係においてとらえ、考察をおこなった。また大きな政治的背景として、1950年代からはじまるシャウプ勧告にもとづく地方平衡交付金制度の成立過程と、戦後改革において文部省が構想していた「学校単位財政基準制度」の制度化の試みとその挫折の過程があることを明らかにした。このもとで地方の多くの学校では、学校財政基準が明確にならないまま父母・地域への教育私費負担に転化することを余儀なくされるようになる。これが戦後日本の教育財政構造を規定する最大の制度的要因となるものである。 重要なことは、こうした政治的動向のなかにあって、教育運動はいちはやく「学校白書運動」を展開し、各学校単位における父母・住民参加の取り組みを強化していたことにある。とりわけ父母負担の実態を調査し、文部行政が断念せざるを得なかった教育費・教育活動費の実際的な規模と水準を、父母との協力共同のもとで多くの地域ですでに明らかにすることに成功していたのであった。繰り返しになるが、この運動の基礎単位は各学校区であり、まさに学校ガバナンス構造がここに形成されたものとみることができる。 本研究においては、すでに平成23年度までの研究のなかで、日本教育史上、「学校づくり」という概念が1950年代の半ばから後半にかけて誕生し、その後、定着することになったことを明らかにしているが、「学校づくり」概念を構成するひとつの要素として、学校財政の制度的展開と個別学校におけるその運用手続きの探求、そのもとで父母の私費負担強化の法的問題を摘発し、これを社会的に明らかにすることを通じて父母・地域住民の実質的な権利と利益を確保しようとする学校経営戦略を位置づけることが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまで当初の計画通り、順調に進展している。ただし、研究成果の発信・発表については不十分な点がある。学会発表等は積極的に行うことができたものの、論文としての成果発表に結びついていない。3年目をむかえるにあたり、いよいよ研究成果をしっかり発信したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、1950年代学校ガバナンス概念の源泉のさらなる探求と、構成要素の基本的枠組みを明確にし、これを論文成果として発表することが中心課題である。一方、「学校ガバナンス」概念について特に占領文書に示される概念との比較検討が必要であり、そのために東京の国会図書館、ワシントン(アメリカ公文書館)での資料収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、購入した物品が予定よりも安価で購入できたため、若干の残額が生じた。次年度は、国内調査および海外調査の必要から旅費に重点を置いている。また調査後の資料のデータベース化等の作業補助のため、アルバイト代(人件費)を予定する。
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