2013 Fiscal Year Research-status Report
1950年代学校ガバナンス構造の形成および定着過程に関する地域実証的研究
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23730741
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
石井 拓児 愛知教育大学, その他の研究科, 准教授 (60345874)
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Keywords | 教育財政 / ガバナンス / 教育費 / 学習権保障 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、1950年代に形成された日本型学校ガバナンス構造における学校財政システムの研究と分析を行なった。とりわけ今年度においては、(1)1950年代的状況を流動的雇用市場を前提とする欧米型の福祉国家的諸制度の構想期ととらえつつ、(2)日本型雇用システムが次第に再評価され定着してくるなかで福祉国家的諸制度は未確立なままとなり、(3)結果として今日の日本型学校財政システムを規定している脆弱な教育財政制度ガバナンス構造が形づくられることとなったことを示した。 こうした日本における学校財政・教育財政をめぐる歴史構造を解明することの含意は、今日の新自由主義的改革のなかで、学校財政・教育財政の量的整備とその法制度的条件が重要な研究的・理論的課題として浮上してきていることを強く意識することにある。そのため、OECDによる日本型学校財政システムに対する歴史的評価をふまえることによって、本研究の枠組みを補強し客観的に検証することが可能となった。 以上を通じて本研究は、さらに次の理論的課題と向き合うこととなった。すなわち第一に、「公教育費」ならびに「私教育費」の概念研究である。日本型教育財政制度のなかで取り残されてきた「私教育費」部分をどのように扱うかは、国際比較の観点からさらなる究明を必要としている。このとき、「私教育」に対する費用と、「公教育」に対する私的費用とを区分することを理論提起した。第二は、「学習費保障制度」と「生活費保障制度」との横断的研究である。従来、研究的には学習費保証制度に焦点があてられてきたことと、生活費保障そのものが我が国では制度的に空白であったために、生活費保障制度の究明が著しく立ち遅れてきたのではないか。学習権保障とは、この両制度を適切に構成することによってこそ可能となる。 以上の到達点及び論点提起をふまえ、本年度では学会発表ならびに論文作成を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1950年代における我が国の学校ガバナンス制度の形成と展開の過程を、1950年代に固有な社会状況と関連付けて究明するという目的に対し、ここまで雇用市場ならびに福祉国家的政策構想と関連付けて検討することができており、従来にはなかった分析視点によって新しい論点を提起することに結びついている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、残された二つの理論課題、(1)「公教育費」ならびに「私教育費」の概念研究、(2)「学習費保障制度」と「生活費保障制度」との横断的研究、に取り組む。概念ならびに制度の国際比較の観点を取り込んで、より普遍性のある理論枠組みを構成する。また学習権保障をめぐる今日の新しい政策展開を念頭に置きつつ、日本型システムの特質と構造を歴史実証的に示していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入した物品が予定より安価であったため。 本科研・研究課題の最終年度となるため、研究成果発表のための国内旅費・海外旅費に多くの支出を予定している。また研究成果をより実証的に示すために教育財政の数量的モデル化を試みる。その際、統計的手法の取り扱いに関する専門家による研究成果の検証を依頼する。そのほか、研究成果を論文として投稿するためのネイティブ校正や印刷費等の支出を見込んでいる。
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