2011 Fiscal Year Research-status Report
言語マイノリティの第一言語教育保障における学校の自律性に関する研究
Project/Area Number |
23730757
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
滝沢 潤 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (20314718)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 言語マイノリティ / 第一言語教育 / 学校の自律性 / チャーター・スクール / 双方向イマージョン・プログラム / 効果的な学校 |
Research Abstract |
本研究は、カリフォルニア州における言語マイノリティの第一言語教育に成果を挙げている学校が保護者、学区、大学、NPO等の諸アクターとの間に構築している関係を学校の自律性の観点から明らかにし、各学校の自律性に適した学校と諸アクターの関係構築やその運用のあり方を解明することを目的としている。 平成23年度は、上記の目的達成の第一段階として、(1)英語能力や学力の向上に成果をあげている双方向イマージョン(TWI)プログラム実施学校(効果のあるTWI実施校)を、通常の公立学校(PS)、オルタナティブ・スクール(AS)、チャーター・スクール(CS))ごとに各1校ずつ選定した。(2)各校への訪問調査を通じて、人事、予算、カリキュラム編成等における学校の自律性の違いに着目して、学校と諸アクターとの関係を考察した結果、以下のことが明らかとなった。 3つの学校形態のなかで最も自律性の高いCSでは、人事(教員確保)が最重要課題の一つとなる。この点に関して、カリフォルニア州においては、英語教育重視のなかでTWIでの実践を希望する(バイリンガル)教員等がいわば供給過多の状況にあること、加えて、専門職団体であるカリフォルニア・バイリンガル教育協会(CABE)の人的ネットワークと研修実施によってCSの自律性を機能させる外部環境が整っていることが明らかとなった。また、通学区域を有するPSは、CSやASと異なり、保護者の選択によってTWIプログラムの実施に正統性が付与されたものではない。当該校では、校長が中心となって、保護者に対してTWIプログラムの意義と有効性を粘り強く説明し、理解と支持をえることに成功していた。このことから自律性が制約された状況における校長のリーダーシップないし専門的指導性の重要性が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた、次の二点について研究が実施できたため。(1)インターネットで公開されている各学校の学力データ(API)を用いてTWIプログラムを実施している学校のうち、その大多数を占めるスペイン語と英語を用いる学校の中から英語能力や学力の向上に成果をあげている学校(効果のあるTWI実施校)を、通常の公立学校(PS)、オルタナティブ・スクール(AS)、チャーター・スクール(CS))ごとに各1校ずつ選定する。(2)各校への訪問調査を通じて、人事、予算、カリキュラム編成等における学校の自律性の違いに着目して、学校と諸アクターとの関係を保護者の学校参加、教員採用・研修、カリキュラム改善や教材確保などの観点から考察する。その際、効果的な学校(Effective School)研究の成果を踏まえ、こうした学校の校長のリーダーシップの特質も明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で使用したデータおよび算出方法を用いて、効果のあるTWI実施校と同様の社会的経済的背景、言語的背景でありながら、APIによる評価において成果をあげていない学校のなかから、学校形態の異なる学校を3校選定し、前年度と同様の観点、方法を用いて訪問調査を行う。 その際、前年度で明らかになった学校と諸アクターとの関係やその運用の実態をふまえ、成果をあげていないTWI学校の諸アクターとの関係構築や運用の特質や課題を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の手続きによって選定された学校形態の異なる学校を3校に関して、前年度と同様の観点、方法を用いて訪問調査を行う。そのため、次年度も2週間程度の訪問調査を実施する予定である。研究費は、この訪問調査と学会発表に主に支出する予定である。 なお、今年度の研究費のうち、103,300円を次年度に繰り越すことにした。これは、年度末に予定していた訪問調査について、為替の変動等をふまえ、旅費の確保を優先させた結果生じたものである。次年度は、繰越金と合わせて、訪問調査や学会発表のために支出する予定である。
|