2012 Fiscal Year Research-status Report
言語マイノリティの第一言語教育保障における学校の自律性に関する研究
Project/Area Number |
23730757
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
滝沢 潤 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (20314718)
|
Keywords | 言語マイノリティ / 第一言語教育 / 学校の自律性 / チャーター・スクールーター・スクール / 双方向イマージョン・プログラム / 効果的な学校 |
Research Abstract |
本研究は、カリフォルニア州における言語マイノリティの第一言語教育に成果を挙げている学校が保護者、学区、大学、NPO等の諸 アクターとの間に構築している関係を学校の自律性の観点から明らかにし、各学校の自律性に適した学校と諸アクターの関係構築やそ の運用のあり方を解明することを目的としている。 平成24年度は、上記の目的達成のために、(1)言語マイノリティの第一言語教育で最も高い成果をあげている双方向イマージョン・プログラム(TWI)のうち、その大多数を占めるスペイン語と英語のプログラム以外の、中国語(Mandarin)、広東語、モン語の各言語と英語とのプログラムを実施している学校を選定した。(2)サクラメント市における各校への訪問調査を通じて、以下のことが明らかとなった。 上記の3つのプログラムは、市内に一定数の話者が存在するものの、保護者にとって非常に目新しく、その意義・効果が十分浸透していない。そのため、教育委員会、とくに教育長の強いイニシャティブによって推進されていることから、これらの言語のTWIを実施している学校はすべて通常の公立学校のなかに設置されたプログラムである。したがって学校の自律性がプログラム実施にもつ意味は、スペイン語のTWIを実施している学校よりも小さいと言える。世界的に見て、多数の話者がおり、また経済的なメリットが大きい中国語や広東語と異なり、モン語は少数民族の言語であるため、モン語のプログラムは、民族としてのアイデンティティの確立という理念が重視されていることがわかった。3つのプログラムに共通する課題としては、すぐれたバイリンガル教員や教材の確保(特にモン語)がある。したがって、こうした状況にある言語のTWIの実施には、教育委員会の明確な方針決定や専門的指導性が重要であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた、次の二点について研究が実施できたため。(1)TWIプログラムを実施している学校のうち、その大多数を占めるスペイン語以外の言語(北京語、広東語、モン語)と英語を用いる学校を選定し、訪問調査を行った。(2)各校への訪問調査を通じて、人事、予算、カリキュラム編成等にに着目して、学校と諸アクターとの関係を保護者の学校参加、教員採用・研修、カリキュラム改善や教材確保などの観点 から考察する。その際、少数言語の実施における教育委員会の役割を明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で使用したデータおよび算出方法を用いて、効果のあるTWI実施校と同様の社会的経済的背景、言語的背景でありながら 、APIによる評価において成果をあげていない学校のなかから、学校形態の異なる学校を3校選定し、前年度と同様の観点、方法を用い て訪問調査を行う。 その際、前年度で明らかになった学校と諸アクターとの関係やその運用の実態をふまえ、成果をあげていないTWI学校の諸アクター との関係構築や運用の特質や課題を明らかにする。その際、特に、英語以外のマイノリティ言語の違いによって、諸アクターとの関係構築等にどのような違いや課題があるのかに着目する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の手続きによって選定された学校形態の異なる学校を3校に関して、前年度と同様の観点、方法を用いて訪問調査を行う。その ため、次年度も2週間程度の訪問調査を実施する予定である。研究費は、この訪問調査と学会発表に主に支出する予定である。 なお、今年度の研究費のうち、117,030円を次年度に繰り越すことにした。これは、年度末に予定していた訪問調査について、為替の変動等をふまえ、旅費の確保を優先させた結果生じたものである。次年度は、繰越金と合わせて、訪問調査や学会発表のために支出する予定である。
|
Research Products
(2 results)