2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日米における教育方法の「一斉化」と「個別化」に関する比較研究
Project/Area Number |
23730781
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Research Institution | 上智大学短期大学部 |
Principal Investigator |
谷田部 美佳(杉村美佳) 上智大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70442126)
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Keywords | アメリカ |
Research Abstract |
平成24年度は、まず、明治中期から大正期にかけての日本の教育界において、一斉教授法の普及が擁護される一方で、いかなる一斉教授法批判が展開されたのか、さらに、どのような個別教授法の教育的・社会的効用が主張されたのかについて、『教育時論』、『教育報知』等の教育雑誌や、教授法書、小学校沿革史の分析を行った。また、同時期のアメリカにおいて、どのように教育方法の個別化が図られたのか、そうした教授法にはいかなる社会的・教育的効用があると主張されたのか、についても分析を行い、日米比較を行った。 その結果、明治中期においては、①同一の科目を同一の方法で教授しても、生徒の心意は異なるため、それぞれ独自に発達していくという主張により、一斉教授法が擁護されたこと。②一斉教授法によって、生徒相互の競争心が芽生え、生徒がより勉強に励むようになるといった主張がなされたことを明らかにした。次に、明治後期において一斉教授法批判が展開され、個別教授法が提唱された背景には、①児童生徒の個人差を無視した画一的教授への批判 ②個性伸長という教育目的の提唱の他に、③独創の精神を発揮させて学力の向上を図ろうとする教育観があったことなどが明らかとなった。 また、同時期のアメリカにおいて、一斉教授法が批判された背景には、一斉教授法が教育活動の画一化、形式化、機械化を招き、学校と子どもの生活との遊離を引き起こしているとする主張があったことなどを明らかにした。さらに、日米で教育方法の「個別化」が図られた共通の要因として、社会生活の諸問題の解決能力を形成する上での「効率性」の追求という教育的・社会的効用があったことを明らかにした。 以上のように、本研究において、教育方法の「個別化」の教育的・社会的効用について、日米比較教育史という観点から研究成果が得られた点が独創的であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は育児休業後9月から研究を再開したため、当初は研究が遅れていたが、国内の小学校調査で沿革誌を収集し、分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、大正期日本における教育方法の「個別化」について、アメリカからの影響と教育的・社会的効用という観点から分析を行い、研究成果を学会で発表する。また、19世紀後半のアメリカにおける一斉教授法および個別教授法の成立過程について、ニューヨーク市、セントルイス市の教育長年報の分析を中心に解明する。 平成26年度は、1930年代のニューヨーク市における個別教授法の普及状況を明らかにし、日米の教育方法の「一斉化」と「個別化」の過程について、教育的・社会的効用という観点から比較、分析を行う。また、これまで得られた研究成果をまとめ、発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、カメラやスキャナー等、史料調査および分析に必要な設備を整える。また、日米双方で史料調査を行うため、調査旅費として使用する。
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