2013 Fiscal Year Research-status Report
近代日米における教育方法の「一斉化」と「個別化」に関する比較研究
Project/Area Number |
23730781
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Research Institution | 上智大学短期大学部 |
Principal Investigator |
谷田部 美佳 (杉村 美佳) 上智大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70442126)
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Keywords | 近代 / 教育方法 / 日米比較 / アメリカ / 一斉化 / 個別化 |
Research Abstract |
平成25年度は、1900年代初頭のアメリカにおける教育方法の「個別化」の過程について検討した上で、こうしたアメリカの情報が大正期日本における教育方法の「個別化」に果たした役割を明らかにし、その研究成果を学会で発表した。研究の結果、新しく得られた知見は主に以下の4点である。 ①アメリカにおける進歩主義教育運動の指導者の一人であるJ. メリアム(Junius L. Meriam, 1872-19600) は、ミズーリ大学附属小学校において、「観察」、「手仕事」、「物語」、「遊び」という4領域からなる生活単元学習を考案し、教育方法の「個別化」を図ったが、その目的は、仕事と余暇という生活全体を通して、市民社会の諸問題を解決する能力を形成することにあり、より「効率性」の高い教育を実践しようとしていたこと。②大正新教育運動の指導者のうち、もっとも重要な役割を果たしたとされる奈良女子高等師範学校附属小学校主事の木下竹次が、J. メリアムの著書、Child Life and the Curriculumを参考にして合科学習を構想し、教育方法の「個別化」を実践したこと。③メリアムの学校では、最終学年まで一貫して4領域の生活単元でカリキュラムが編成されたが、木下は中合科学習のみに導入したため、カリキュラムに一貫性がなく、試行錯誤が続いたこと。④メリアムが重視したのは、個性の相違の原理に基づく個人学習と多様なグループ学習であり、学習形態は状況によって変化していくと考えられていたが、木下は、学級学習の集団思考を評価し、個人学習の後に学級学習を挿入した。この点に教育方法の「個別化」の日本的変容がみられること。 以上のように、本研究において、アメリカで考案された教育方法の「個別化」が日本の教育現場に移入され、変容する過程について、日米比較教育史という観点から研究成果が得られた点が独創的であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、1900年代初頭のアメリカにおける教育方法の「個別化」の過程について検討した上で、こうしたアメリカの情報が大正期日本における教育方法の「個別化」に果たした役割を明らかにした。その研究成果を論文にまとめ、学会で発表したことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、1930年代ニューヨーク市における個別教授法の普及状況を明らかにし、日米の教育方法の「一斉化」や「個別化」の過程を、教育的・社会的効用という観点から比較する。また、これまで得られた研究成果をまとめ、発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査を行う予定であったが、学会発表の準備に時間がかかり、調査を来年度に変更したため。 おもに国内調査、および海外調査、学会出張費に用いる。
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Research Products
(2 results)