2011 Fiscal Year Research-status Report
発達障害をめぐる教育実践の相互行為研究:社会構成論の教育学的貢献の可能性
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23730810
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Research Institution | Teisei Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
鶴田 真紀 貞静学園短期大学, その他部局等, 講師 (60554269)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 社会構成論 / 特別支援教育 / 発達障害児 / 教師 / 教育実践 / 相互行為 / 質的調査 |
Research Abstract |
本年度は研究実施計画に基づき、発達障害をめぐる教育実践の相互行為研究に向けて(1)理論的研究および(2)実証的研究を行った。 (1)に関しては、(1)社会構成論の社会学上の研究目的と理論的諸問題の整理および(2)社会構成論を教育(社会)学的に応用する際の理論的課題の定式化を行った。その成果を本年度は代表者が参加している研究会等において逐次報告をしてきたが、来年度以降も引き続き継続していく予定である。 (2)関しては、今年度は(1)発達障害児に対する就学前の教育実践として、発達障害児を担当する複数名の保育者に対してインタビュー調査を実施した。その目的は、「発達障害を有する子ども」(もしくは「発達障害が疑われる子ども」)を保育する実践者が抱える「困難」の総体的把握に努めることであり、保育者たちが幼児特有ともいえる「未熟さ・未発達性」と「発達障害」との境界域を判断することに困難や戸惑いを感じつつも、そのつど対応をしていくあり様の一端が明らかになった。また、(2)これまでの蓄積されたデータの再分析を実施した。その成果を、「障害児が泣く―泣きとその記述をめぐる相互行為分析―」(北澤毅編『文化としての<涙>』所収、勁草書房、脱稿済)として論文化を行った。本論文を通して、重度の知的障害を伴う発達障害を有する児童に対して教師達がどのように児童の行為と障害を結びつけ、障害と想定された行為に対応していくかが明らかになった。実証的研究における(1)および(2)の成果は、今後予定している小中学校における軽度知的障害児をめぐる教育実践を調査・研究していく上での比較検討のための資料としても位置づけることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、(1)本研究が依拠する社会構成論を教育学的に応用するための理論的研究と(2)蓄積データの再分析と保育者へのインタビュー調査を含む実証的研究を行うことであった。 理論的研究に関しては、その特性として来年度以降も堅実に行っていくことにより成果をあげることができるものであると考えている。したがって、今年度研究会等で報告した理論的研究の成果はまだ中途段階のものであり、今後も継続していくことにより新たな知見の発見に努めたいと考えている。実証的研究に関しては、蓄積データの再分析として論文を執筆し、また保育者へのインタビュー調査を実施し、当初の計画をおおむね実現することができた。 来年度以降はさらなる調査の実施や学会発表や論文執筆を目指す等の課題は残されているが、上記の理由から本年度の研究目的は一定程度達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究代表者の妊娠による体調不良のため、理論的研究や蓄積データの再分析は実施可能であったが、実証的研究における新たな調査の開始までは着手することができなかった。そのため、次年度に使用する予定の助成金が残っており、さらに次年度の5月より産後休業・育児休業を取得することにより一時本研究を中断する予定である。したがって、次年度の大半は研究中断の期間に該当するため、本年度および翌年度の研究費の残額は研究復帰後より使用する予定である。 しかしながら、休業前および休業中においても(1)理論的研究に関しては、社会構成論に依拠した文献を基に研究を継続し、(2)実証的研究に関しては、蓄積データの再分析の準備を可能な限り実施したいと考えている。そうすることで、研究復帰後に本研究課題を順調に推進させることを目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前欄の通り、代表者は次年度5月より育児休業により本研究を一時中断するため、次年度は4月の1ヶ月のみしか本研究を進捗させることができない状況にある。 そのため、現実的に本研究の大きな進展は見込めないが、研究復帰後の研究実施を円滑にするための研究機材の購入(主に調査において使用する予定である)を予定している。
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