2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千田 雅隆 京都大学, 白眉センター, 助教 (00451518)
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Keywords | 岩澤主予想 / p進L関数 / 志村曲線 / CM点 / Euler system / 肥田理論 / 保型形式 |
Research Abstract |
今年度は国立台湾大学のMing-Lun Hsieh氏と楕円保型形式に対する反円分的岩澤主予想についての共同研究を行い, 素数pで良い通常還元をもつ偶数の重さの楕円保型形式に対して, 比較的緩い仮定の下で反円分的p進L関数によって生成されるidealが対応するSelmer群の特性idealに含まれるという結果を得ることができた. この結果は有理数体上の楕円曲線の場合に反円分的岩澤主予想に関して同様の結果を証明したBertolini-Darmonによる仕事の楕円保型形式の場合への一般化となっている. さらに, この結果を応用することにより, 楕円保型形式に付随するL関数の中心値に対するBloch-加藤予想についての部分的な結果も得ることができた. 岩澤主予想とはL関数の特殊値をp進的に補間したp進L関数によって生成されるidealがGalois表現を用いて代数的に定義されるSelmer群の特性idealと一致するであろうという予想であり, 岩澤理論において非常に重要な予想のひとつといえる. 今年度に得られた結果とSkinner-Urbanによる三変数岩澤主予想の結果を組み合わせることで, 多くの場合に反円分的岩澤主予想が示されることが期待される. さらに, この結果は本研究の動機の一つであるp進BSD予想の保型形式の場合への一般化とも関係しており, 関連する様々な問題にも応用が見込まれる. これらの結果は昨年度の研究で導入された四元数環上の保型形式の合同を応用することによって証明され, 特に志村曲線上のCM点から作られるGaloisコホモロジーの類から保型形式のある種の合同を用いることで一般の重さの保型形式の場合にEuler systemを構成することが証明の鍵となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は本研究の中心的な研究対象である保型形式から定まるp進L関数についての重要な予想のひとつである岩澤主予想に関して大きく研究を進めることができた. さらに今年度得られた結果を示すのに使われた手法はp進周期に関する様々な予想の研究にも大きな役割を果たすと考えられることから, 研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はp進L関数の特殊値と重要なp進周期の一つであるp進regulatorの関係を予想するp進Beilinson予想について取り組む予定である. 特に二つの楕円保型形式から定まるRankin積に付随するp進L関数の特殊値についてのp進Beilinson予想の研究を行いたいと考えている. p進Beilinson予想はp進L関数の特殊値とK群からp進cohomologyへのp進regulator写像との関係を与える予想であり, 楕円保型形式に対する円分的p進L関数に対してはGealyやBannai-Kingsなどの研究により近年大きく進展している. さらに重さが2の二つの保型形式のRankin積の場合にBertolini-DarmonがBesserの結果を用いることでp進Beilinson予想に関して重要な結果を示しており, この予想をより一般の重さの保型形式のRankin積に付随するp進L関数の場合に明らかにすることが目標となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究費は主に海外の研究者との研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である. また, 最新の研究の情報収集のため, 国内や海外で行われる研究集会などに参加するための旅費や書籍の購入にも使用する予定である.
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