2011 Fiscal Year Research-status Report
Banach環上のスペクトル保存写像とその摂動の安定性
Project/Area Number |
23740097
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三浦 毅 山形大学, 理工学研究科, 教授 (90333989)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | スペクトル保存 |
Research Abstract |
今年度はスペクトル半径に関する等距離写像の研究を主に行った.まずσをスペクトルとするとき,Aのすべての元a,bに対して σ(S(a)S'(b)) = σ(T(a)T'(b))を満たす全射S, S': A → B及びT, T':A → B' の構造を解明し,B,B' が単位的半単純可換Banach環のとき,より一般的な結果が得られた.具体的には,Aが単なる添え字集合で,スペクトル半径rに関して r(S(a)S'(b)-e)=r(T(a)T'(b)-e)がAのすべての元a,bに対して成り立つとき,SとT及びS'とT'は本質的に荷重合成作用素を用いて表されることを示した.ただしeは単位元である.この定理により,これまでの単位的半単純可換Banach環の間のスペクトル保存写像に関する結果を統一することが可能となった.その後,単位元の存在を仮定せずに,関数環の間の最大値ノルムに関する全射等距離実線形写像の構造を決定した.このような写像は既存の結果とほぼ同様の形をしたものしかなく,荷重合成作用とその複素共役によって表現されることを示した.ここで得られた等距離写像の表現はChoquet境界上で成り立つことを示したが,それがShilov境界上に拡張出来るか,さらに極大イデアル空間上でも成立するのかは解明出来ておらず今後の課題である.この定理の直接の系として,単位元をもつとは限らない半単純可換Banach環の間の,スペクトル半径に関する全射等距離写像の構造が解明された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スペクトルを保存する全射の組の構造を決定する問題に関しては,単位元をもつ場合により一般的な設定で問題を解決している.この意味で23年度の目的は当初の計画以上に進展しているといえるが,単位元の存在を仮定しない場合には,可換Banach環の間の等距離写像の構造が解明されただけで,写像の組の関連性や非可換Banach環の場合が残されている.これらの問題が今後の課題の一つとなる.
|
Strategy for Future Research Activity |
単位元の存在を仮定せずに,関数環の間の全射等距離写像の構造を決定できたが,そこでは積の構造が大きく関与しているように思われる.一方でAraujo and Fontは積の構造を仮定しない代わりに,複素線形等距離写像の構造を解明している.したがって,これらの研究をつなぐ結果として,積の構造を仮定しない線形空間の間の全射等距離写像の構造を詳細に調べたい.さらに摂動の安定性については問題解決の糸口がつかめずにいるので,具体例に対する考察から進めて,一般的な安定性問題の解決に取り組まなければならない.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は震災の影響を憂慮し,活動を自粛せざるを得ない場面が多々あった.本年度はより積極的に研究活動,特に国内外の研究集会に参加し,研究成果を発表するとともに多くの研究者との議論の中から重要な情報を獲得することにより研究のさらなる発展を目指す.
|