2013 Fiscal Year Research-status Report
Banach環上のスペクトル保存写像とその摂動の安定性
Project/Area Number |
23740097
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 毅 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90333989)
|
Keywords | スペクトル保存写像 / 摂動の安定性 / 等距離写像 |
Research Abstract |
単位元をもつとは限らない関数環上の全射等距離写像の構造については,Choquet境界上では荷重合成作用素であるか,または荷重合成作用素の複素共役として表されることを示したが,より一般にShilov境界あるいは極大イデアル空間上での振舞いが問題となっていた.まずChoquet境界上での等距離写像の表現は,一般に極大イデアル空間上には拡張できないことを示した.しかしShilov境界上では全射等距離写像は荷重合成作用素であるか荷重合成作用素の複素共役であることを証明した. n次正方行列Aに対してBanach空間に値をとる微分方程式y'=AyがHyers-Ulamの意味で安定的であるための必要十分条件は,Aの任意の固有値に対してその実部が0でないことを示した.この結果の特別な場合として,n階定数係数線形微分方程式がHyers-Ulamの意味で安定的であるための必要十分条件は,その特性方程式の任意の解の実部が0でないことが得られる.この特徴づけは既に知られているが,その証明は複雑な議論を用いたものであった.一方,本研究で用いられた手法は,ジョルダン標準形を用いた単純な発想によるものであり,より簡明な議論でさらに一般的な結果を得ることに成功した.さらに安定性問題に関しては,一般化された加法的写像についても考察し,それがHyers-Ulamの意味で安定的であるための十分条件を与えた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関数環上の等距離写像の構造はShilov境界上の振る舞いまで記述することが出来たが,その結果を一般の関数空間にまで拡張しようとすると,Choquet境界での円の重なり具合が問題となり,その構造解明には至っていない.引き続き問題解決に努めなければならない.
|
Strategy for Future Research Activity |
等距離写像の構造を調べる上で積の構造は重要な情報を提供してくれるが,一般の関数空間上の等距離写像では線形構造しかもたないため,解析は困難であるものの逆にこれまでに見ることのなかった興味深い性質が現れることが分かってきた.関数空間上の等距離写像の構造はある条件のもとでは決定できることが分かるので,今後はそれを用いてこれまでに知られている複素線形等距離写像の構造定理を,複素線形性を仮定せずに示す問題に取り組む必要がある.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究進捗状況変化のため 今年度はこれまでの研究成果発表のためアメリカでの講演があり,そのための出張経費として適切に使用する.
|