2011 Fiscal Year Research-status Report
無限次元タイヒミュラー空間論の新展開:モジュライ空間の構成
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23740102
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤川 英華 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80433788)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 複素解析学 / リーマン面 / タイヒミュラー空間論 / 擬等角写像 / 写像類群 |
Research Abstract |
モジュライ空間の構造の考察は,タイヒミュラー空間とその上に作用するタイヒミュラーモジュラー群の考察に帰着される.これまでの研究では,タイヒミュラー空間上に,タイヒミュラーモジュラー群の作用に対する極限集合の概念を導入し,その分析を行ってきた.タイヒミュラー空間の商空間である漸近的タイヒミュラー空間上には,漸近的タイヒミュラーモジュラー群が作用する.今年度の研究は,まず,タイヒミュラー空間上のタイヒミュラーモジュラー群の作用による極限集合と,漸近的タイヒミュラー空間上の極限集合の関連を調べた.また,漸近的タイヒミュラー空間上の極限点のファイバー空間上の作用や,漸近的タイヒミュラー空間上の不連続領域の存在について考察した.タイヒミュラー空間,モジュライ空間,漸近的タイヒミュラー空間は,研究代表者によってこれまでに導入された intermediate タイヒミュラー空間と enlarged モジュライ空間を通して関係づけられている.よって今年度得られた漸近的タイヒミュラー空間上の極限集合の考察は,本研究課題であるモジュライ空間の考察へと自然に移行される. また,研究代表者のこれまでの研究で,リーマン面の双曲幾何学的条件のもと,位数有限の漸近的タイヒミュラーモジュラー変換は漸近的タイヒミュラー空間上に固定点をもつことが分かっていた.今年度の研究では,漸近的タイヒミュラーモジュラー変換が位数有限になるための十分条件も得ることができた.よって漸近的タイヒミュラーモジュラー変換がリーマン面上の漸近的等角写像から導かれるための十分条件が得られたことになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイヒミュラー空間,および漸近的タイヒミュラー空間上の極限集合については,基本的理論はほぼ完成している.また,問題点も具体的に明らかになっている.今年度の結果を含めた研究の一連の流れは,国際研究集会「International Conference on Analysis, In Memory of Professor Sheng Gong」(Academy of Mathematics and Systems Science, Chinese Academy of Sciences) で発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果を精査し,論文にまとめる.その中で未解決課題へのヒントが得られることも期待できる.講演により成果を積極的に公表することで,新しい視点を議論したい.特に,リーマン面・不連続群合同研究集会に参加し,成果の公表および関連他分野の研究者と意見交換をする.また,7月には国際研究集会「Group actions and applications in geometry, topology and analysis」に招待されているので,そこで成果の途中経過を発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究分野は複素解析,クライン群,幾何学的群論などの周辺の多岐にわたっている.これらの分野では既に多大な研究の蓄積があり,研究が活発に進んでいる分野では最新の文献の種類は非常に多く,それらの秩序だった整備が必要である.そのため,文献の調査のために書籍を購入する. 研究協力者とは常に連絡を取り合っており,本課題の計画とその具体的内容を説明し,協力をお願いしている.よって次年度の研究にすぐに取り組める状態である.そこで関連する日本人研究者のもとへの出張と,議論と成果発表のための国内研究集会参加を6, 7回予定している.このための国内旅費に使用する. 外国旅費に関しても,関連する研究者との議論のための出張と,国際研究集会「Group actions and applications in geometry, topology and analysis」での成果公表のために使用する. 謝金としては,談話会の講演,勉強会での講師などの講演謝金を計画している. 得られた結果の改良および発展のため,本研究の成果全般と関連する研究の紹介および今後の問題設定をまとめた研究資料を作成し,関連する研究者の便宜に供するようにようにしたい.そのための費用が必要である.
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Research Products
(4 results)