2013 Fiscal Year Research-status Report
半導体工学・プラズマ物理に現れる双曲・楕円型連立方程式系の数学解析
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23740111
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 政尋 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30587895)
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Keywords | Hydrodynamic model / Drift-diffusion model / Euler-Poisson equations / 安定性解析 / 漸近解析 / 解の爆発 |
Research Abstract |
半導体工学・プラズマ物理に現れる双曲・楕円型連立方程式系で与えられるモデルに対する初期値境界値問題の解の挙動を解析することが本研究の目的である.平成25年度は, プラズマが接触する固定壁付近に形成されるシースの数学解析に注力した.プラズマ物理学では Euler-Poisson 方程式を用いた形式的な議論により, シースが形成される為の条件として Bohm 条件が提案されている. この条件は,プラズマ中の正イオンが極超音速でシースに流入しなければならないことを意味する. 電子と単一種類の正イオンで構成されるプラズマについては, 1950年頃に H. Bohm により Bohm 条件が導出されている. 一方, 工学で利用されるプラズマの多くは, 電子と複数種類の正イオンが混在する多成分プラズマであり, K.-U. Riemann はこの多成分プラズマに対して Bohm 条件を導いている. 平成24年度には, 多成分プラズマに対する Bohm 条件に数学的な正当性を与えることを目的として, Bohm 条件下で Euler-Poisson 方程式の定常解が存在して時間的に漸近安定であることが証明され,シースは定常解に対応することが解明された. 平成25年度は, 安定性解析における Bohm 条件の必要性を示唆する結果を得た. さらに,前年度までに, Euler-Poisson 方程式を用いて,シースとプラズマが遷移している状態を数値的に解析し,モデル方程式の解は時間経過とともに定常解と希薄波の重ね合わせに漸近している様子が確認されている.平成25年度は,この事実を数学的に証明することに取り組み,部分的な成果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一種類の正イオンに対する Euler-Poisson 方程式について,シースとプラズマが遷移している状態を考察した.簡易的な数値解析ではあるが,プラズマ領域は希薄波に対応することが確認され,本研究の根幹となる予想に確信が得られている.また,部分的ではあるが数学的な成果も得られている. 多成分プラズマの Euler-Poisson 方程式の定常解の安定性解析におけるBohm条件の必要性に関する解析を行った.全空間において線形化した Euler-Poisson 方程式にフーリエ変換およびラプラス変換を適用させて得られる固有値問題について,固有値が負であるための必要十分条件は,Bohm 条件であることを示した. 以上より,おおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,プラズマ中に単一種類の正イオンのみが存在する場合をモデルした偏微分方程式に対して,その時間大域解は時間経過とともに,定常解と希薄波とよばれる特殊な解の重ね合わせに漸近するという命題を証明することが目標となる.この証明は,スペクトル解析による解の各点評価と,定常解の安定性解析で使用した空間方向に重み関数を付けたソボレフ空間を使用する手法を組み合わせて行う. また,半導体の放物・楕円型連立系モデルも解析する.密度の正値性及び,エネルギー形式を用いた積分量の評価よりアプリオリ評価を導き,時間大域可解性と定常解の安定性を示す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成 25 年度前期に台湾・韓国で開催された国際研究集会において本研究課題の成果発表・情報収集を行う予定であったが,講義の担当科目が前期に集中しており補講の時間調整も難しかったため,これらの研究集会への参加を断念した.それらの分の旅費が未使用額として発生した. 平成 26 年 7 月にスペインで開催される第 10 回 AIMS 国際会議 Dynamical Systems, Differential Equations and Applications に参加して,本研究課題に関する研究成果を発表する.この会議には,プラズマおよび半導体のモデル方程式の解析に造詣が深い, Pierre Degond 教授 (Imperial College London) や Ming Mei 教授 (McGill大学) 等が参加予定であり,有意義な討論が期待される.この旅費として研究費の大半を使用する.
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