2011 Fiscal Year Research-status Report
新しい機構のフェッシュバッハ共鳴の研究:極低温分子生成のために
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23740305
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 貴稔 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (30328562)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | フェッシュバッハ共鳴 / 量子縮退気体 / 極低温分子 / レーザー冷却 |
Research Abstract |
本研究はRb原子とSr原子混合系のレーザー冷却を行い、全く新しい機構である超微細結合定数の変調によるフェッシュバッハ共鳴を、実験により世界で初めて観測することを目的とする。そのためには、RbとSr原子の同時トラップを実現しなければならない。Sr原子MOTのために、Srの放電セルを用いてFM分光を行い、波長461nm光源の周波数安定化に成功した。 Rb原子とSr原子を同時にレーザー冷却するための真空装置の開発を行った。Rb原子とSr原子はオーブンで熱して原子ビームとして取り出し、レーザーで速度を減速することが必要である。しかし、Rb原子とSr原子がオーブンとして機能する温度はそれぞれ80℃と400℃であり、かなり異なる。そこで次のような改良を行った。現有のSr原子の真空装置に、Rbオーブンを増設し、RbとSrで独立なオーブンとする。超高真空の真空チャンバーに原子ビームを接続し、RbとSr原子の同時トラップのための真空装置を作製した。 この真空装置を用いて、Rb原子ビームとSr原子ビームにレーザー光を照射して、それぞれゼーマン減速を行った。減速されたRbに波長780nmのレーザー光を、減速されたSrに波長461nmのレーザー光を6方向から照射し四重極磁場を用いた。これによりRbとSrの同時MOTに世界で初めて成功した。 MOTでトラップしたSr原子の原子数を増加させるために、リポンプ光の光源として波長497nmのレーザー開発を行った。994nmのECDLを作製し、PPLN導波路により第2次高調波として497nmのレーザー光を発生させた。このレーザー光をMOTされたSr原子集団に照射することで、SrMOTの原子数を30倍に増大させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までRbとSrの同時MOTを行った者は誰もいなかった。実験技術的には、両方の原子に対するレーザー冷却用光源と光学系や制御系が必要なことと、特に原子の蒸気圧の差が大きいことがネックになっていた。また、波長1064nm・780nm・461nmのレーザー光を真空層に照射するため、窓の材質としてこれら波長が約2倍近く異なるような広帯域な無反射防止(AR)コートを用いる必要がある。これを実現するために、2本の原子ビームを結合する非常に複雑な真空装置を作製する必要があり、これを実現することが今年度の最大の山場であったが、複数回の真空テストを行いながら真空装置を組み上げた。この結果、Srオーブンを400℃に暖めた状態でも差動排気により、メインチャンバーの真空度10のマイナス11Torrを実現した。これはボース・アインシュタイン凝縮やフェッシュバッハ共鳴などの実験を行うために十分な真空度である。また、広帯域なARコートつき窓を取り付けることで、RbとSr原子の同時MOTに世界で初めて成功した。量子縮退混合系はこれからだが、当初予定になかったリポンプ光の作製により原子数を30倍へと増大することができた。ここまで初年度に達成できたことは、おおむね順調、と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同時MOTしたRbとSr原子を光トラップへ移行する。光トラップされる原子数を増大するためには、光トラップのポテンシャルよりも原子の温度を下げることが効果的である。そこでSr原子のさらなるレーザー冷却を試みる。Sr原子の2段目のレーザー冷却として、波長689 nmの狭線幅のレーザー遷移がある。この遷移は線幅が狭いため、レーザー光の線幅狭窄化が重要となる。レーザー光源としてリットマン型の外部共振器型半導体レーザーを作製する。このレーザー光にEOMでサイドバンドを発生させたものを、ULE共振器へと入射しその反射光を用いて、PDH法によりレーザー光源の線幅狭窄化を行う。線幅が狭くなった689 nm光源によりSr原子のレーザー冷却を行い、数μKオーダーの温度を実現する。また、光トラップ中の原子数増大の方法として、光ポテンシャルの深さを深くする方法がある。上記の光源がうまくいかないばあいは、光ポテンシャルの深さを深くする実験を行う。SrとRb原子集団を光トラップへ移行し、協同冷却を行うことで同時量子縮退を実現する。この極低温原子集団に強い磁場を印加することで、フェッシュバッハ共鳴を観測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の鍵となるのが半導体レーザーの線幅狭窄化である。Sr原子の689 nmの遷移の自然幅は7kHzであるが、外部共振器型半導体レーザーの周波数線幅は数100 kHz程度の広がりを持っており、これを7 kHz以下へと狭くしたい。そのためには、ある基準となる周波数が必要であり、その基準周波数とレーザー周波数の差を観測して、それが小さくなるようにフィードバックすることでレーザーの線幅を狭くすることができる。基準周波数として共振器が有望だが、通常の材質だと周波数ドリフトがあり、実験のたびに基準周波数が変わってしまう。そこで、低膨張ガラスであるULE共振器を購入する。これは、ある温度で温度膨張係数がほとんど0近くになるULEというガラスでできており、ULE共振器は極めて安定な基準周波数となる。共振器から外部振動を除去し、真空装置内に入れて温調を行う。そしてこのULE共振器にPDH法を用いることで、レーザーの線幅狭窄化を行う。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Ultracold Sr atoms and FrSr molecules toward the search for an electron-EDM2012
Author(s)
T. Aoki, Y. Yamanaka, Y. Torii, K.Harada,A.Oikawa,T.Hayamizu,S.Ezure,M.Itoh,T.Furukawa,H.P.Yoshida,H.Kawamura,T.Sato,T.Kato,S.Liu,H.S.Nataraj,Y.Sakemi,M.Abe,G.Gopakumar,M.Hada,andM.Kajita
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Journal Title
Proceedings of 5th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms 2011, edited by N. Sasao
Volume: 5
Pages: 118-120
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[Presentation] Ultracold Sr atoms and FrSr molecules toward the search for an electron-EDM2011
Author(s)
T. Aoki, Y. Yamanaka, Y. Torii, K.Harada,A.Oikawa,T.Hayamizu,S.Ezure,M.Itoh,T.Furukawa,H.P.Yoshida,H.Kawamura,T.Sato,T.Kato,S.Liu,H.S.Nataraj,Y.Sakemi,M.Abe,G.Gopakumar,M.Hada,andM.Kajita
Organizer
5th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms 2011
Place of Presentation
岡山大学
Year and Date
2011年10月8日