2011 Fiscal Year Research-status Report
超伝導イオントラップ系におけるイオンの計測・制御に関する研究
Project/Area Number |
23740314
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
衞藤 雄二郎 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所量子ICT研究室, 専攻研究員 (50600003)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 冷却イオントラップ / 単一原子 / コヒーレンス時間 / 非古典光 / モードロックパルス |
Research Abstract |
イオントラップ中に捕獲されたイオン原子は、振動運動の自由度とスピン自由度の両者の利用が可能であり、高精度な演算や高効率の検出方法が確立されている事から、量子情報処理や時間標準を実現する上での有力な候補となっている。本研究は、イオンを用いた量子情報処理や時間標準の更なる高度化に向けて、低温に冷却されたイオントラップ系を設計・構築し、冷却イオントラップによる単一イオンの測定と制御技術の確立を目指すものである。イオントラップ系の冷却により、トラップポテンシャルの僅かな変動が抑圧され、量子情報の担い手となる単一イオンの振動状態コヒーレンスの長寿命化が期待できる。更に、冷却チャンバーの使用により、常温のチャンバーと比べ容易に高い真空度が達成できると考えられる。平成23年度は、本研究を遂行する上で最も重要となる冷却チャンバーの設計及び構築を行った。液体窒素タンクとトラップ冷却用銅製ボックス及びオクタゴンチャンバーを用いて、最低到達温度-180ケルビンにて4時間程度の持続時間を確認した。コヒーレンス時間の長寿命化を観測するために必要な到達温度と十分な持続時間が得られている。また、イオントラップを高効率に冷却するために、熱伝導性の高い窒化アルミを素材とした絶縁部品を作成した。更に、光と原子の複合的な量子情報処理システムを見据え、本年度はモードロックパルスを用いた非古典光の高効率な検波に関する研究も行った。成果としては、モードロックパルスを用いて、-5 dB程度の光の量子雑音圧搾の観測に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度、本研究を遂行する上で最も重要であり基礎となる冷却イオントラップチャンバー系の設計及び構築が完了した。チャンバーの冷却が十分な時間維持される事も確認済みであり、本研究の目的である冷却トラップによる単一原子の測定及び制御に向け順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究代表者の衞藤は平成23年3月31日付で独立行政法人情報通信研究機構を退職し、4月1日付で学習院大学理学部物理学科の助教に着任した。新たに着任した研究機関において、申請した研究を効率的に進展させるために、研究計画を若干変更する。新たに着任した研究室では、 中性のルビジウム原子を用いたボースアインシュタイン凝縮体の研究を行っている。そのため、当初予定していた原子種であるカルシウムイオンではなく、中性のルビジウム原子を用いた実験を行う。平成23年度に作成した冷却チャンバーを用いて中性ルビジウム原子を捕獲し、チャンバーの温度や真空度と原子の捕獲時間やコヒーレンス時間に関する調査を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費は主に、新たに着任した研究室において冷却チャンバー装置を構築するために必要となる真空部品等の購入に用いる予定である。また、原子を捕獲するための捕獲ポテンシャル等のシミュレーションを行うために、数値計算用のソフトを購入する予定である。
|
Research Products
(2 results)