2012 Fiscal Year Research-status Report
長期モニタリング観測による火山雷発生メカニズム推定
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23740332
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
相澤 広記 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50526689)
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Keywords | 火山雷 / 電磁波 / 地電位 |
Research Abstract |
平成23年度に整備した桜島火山の可視映像観測から、ブルカノ式噴火発生の約1秒前に火映の明るさが変動するという現象を発見した。Tameguri et al. (2002) は地震波解析により、桜島南岳の爆発におよそ1秒先行して、火口直下深さ約2 kmで爆発地震が開始することを示したが、明るさ変動の発生はその時刻に対応する。このことは深さ2kmでの爆発地震とほぼ同時に、火口底で何らかの物質移動が生じていることを示し、深さ2kmで圧力波が発生し、それが火口底に到達し爆発を起こすというこれまでのモデルと矛盾する可能性を示唆している。 火山雷の定量的な理解のため、平成24年度は毎日深夜2~4時に磁場2成分-電場2成分の観測を1kHzサンプリングで行った。本研究課題で整備したGPSに時刻同期した可視映像と突き合わせることにより、火山雷に伴う電磁気的なシグナルを多数捉えた。その中でも特に明るく光り、多量の電流が寄与する対地放電を50例以上捉えることに成功した。対地放電の継続時間は最大0.1秒間で、その内の約0.002秒間でパルス的に特に大きな信号を記録した。可視映像では1回に見える対地放電中、2回のパルスが含まれている例もある。観測量のオーダーは、最大で磁場10nT、電場10,000 mV/km程度であった。対地放電を鉛直電流ダイポールと近似し、放電経路長と、火口と観測点までの距離を考慮すると、電流値は最大100Aと計算される。これとパルスの継続時間から放電された電荷量は0.2C程度と推定された。この値は一般の気象雷に比べ1~2桁小さい。また継続時間から大きな放電前後に弱い電流が発生することも明らかになった。この継続時間は気象雷に伴うstepped leader や長く弱い放電(連続電流)の継続時間とほぼ等しい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に構築した可視映像観測装置により正確な時刻が埋め込まれた噴火の映像を大量に (1000イベント以上) 取得できている。その結果、ブルカノ式噴火発生の約1秒前に火映の明るさが変動するという予想外の現象を発見することができた。 その一方で、火山雷観測については問題が生じた。本研究課題で購入した汎用の雷観測システムをテストした結果、火山雷に対する感度は十分であり、リアルタイム観測に用いることはできるものの、その仕様により、火山雷の電流値や継続時間等を定量的に明らかにするには不十分であることが明らかになった。そのため火山雷を定量的に把握するには別の装置を新たに用いる必要が生じた。そこで本研究では東京大学地震研究所から電場-磁場の観測装置を2台レンタルし、1kHzで深夜のみの連続観測を行った。基本的にはAizawa et al. 2010, GRLで用いた装置と同様であるが、サンプリング周波数を70倍に上げている。これにより火山雷の継続時間が最大0.1秒程度であること、流れる電荷は0.2C程度であることが明らかになり、本研究の目的達成に近付いている。しかしながら得られた時系列の波形、および気象雷から推定される対地放電中のReturn stroke 1発の継続時間(70μs)を考慮すると、1kHzサンプリングでは火山雷の全体像を捉えたとは言い難い。また、山麓で観測される地電位が、対地放電により大地を伝ってきたものとの仮定の下で、地下の比抵抗をモニタリングする計画であったが、地電位差は磁場変動に誘導された成分である可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の早い時期に30kHzサンプリングで臨時観測を行い火山雷の全体象を捉える予定である。これにより、前駆放電からリターンストローク、ダートリーダー、連続電流と進む、気象雷(対地放電)のプロセスが火山雷でも成立するのか、またその電流値や継続時間にどのような違いがあるのかを明らかにする。また空中放電と対地放電の違いも明らかにしたい。さらに山麓で観測される地電位が、対地放電により大地を伝ってきたものであるか、磁場変動に誘導された成分であるかを明らかにする。また30kHzの観測と汎用の雷観測システムを並行観測し、汎用の雷観測システムで示される火山雷の極性、電流値を検定する。得られた情報を元に汎用の雷観測システムの構築を行う。 30kHzの臨時観測とは別に、火山雷と噴火の定量的な関係のために平成24年度に行った1kHzサンプリングの電場-磁場観測を継続しデータを蓄積する。このデータと、可視映像、地震、ひずみ、空振等、種々の火山観測データと比較し、その関係性を定量的に明らかにする。得られた関係から、火山雷観測が噴火規模やタイプの推定にどの程度の貢献できるかを検証する。 ひずみ、地震、空振データと可視映像を突き合わせることで、本研究の予想外の発見であるブルカノ式噴火発生の約1秒前の火映の明るさ変動の解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の早い時期に30kHzサンプリングで臨時観測を行う予定であるが、このための旅費に使用する。また30kHzのデータを収録する大容量CFカードを購入する。その他に火山雷を用いた地下電気比抵抗の長期モニタリングのために業者にハイサンプリング、省電力の電場ロガーの開発を依頼しているが、この購入費用に使用する。現在まで、山麓で観測される地電位が、対地放電により大地を伝ってきたものなのか、磁場変動に誘導された成分であるかが明らかではないが、これは30kHzの観測によって明らかにする。どちらの場合であっても地下の比抵抗構造モニタリングは可能である。山麓の地電位変動の原因が対地放電により大地を伝う電流である場合、比抵抗変化は火口と観測点間の積分となる。一方、磁場変動に誘導される成分である場合、観測点下の比抵抗変動を表すことになる。
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Research Products
(1 results)