2012 Fiscal Year Research-status Report
新規ピンサー型金属錯体の合成とアンモニアを用いた触媒反応への応用
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23750064
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
亀尾 肇 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50597218)
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Keywords | 無機化学 / 錯体化学 / 有機金属化学 |
Research Abstract |
平成23年度にロジウムおよびイリジウムヒドリド錯体が極めて珍しい Si-C 結合の切断反応を誘起することを明らかにした。平成24年度では、その研究を発展させることで、Si-C 結合のみならず、Si-O 結合および Si-F 結合すらロジウムおよびイリジウムヒドリド錯体が切断可能であることを見出した。これらの反応を速度論的および理論化学的に考察することで、Si-O 結合や Si-F 結合の切断にはヒドリド種が必須であり、ROH や HF を発生を伴って反応が進行することを明らかにしている。これまで、後周期の遷移金属錯体で Si-O 結合が切断された例はほとんどなく、Si-F 結合に関しては切断された反応例は全くない。極めて興味深い反応を開発できたものと考えており、それらの触媒化への検討を実施している。 加えて、昨年度から引き続きσ電子受容性ホウ素配位子の化学に取り組み、ホウ素配位子がアルコールの移動水素化反応の触媒活性を大幅に向上させることを見出した。さらに、ホウ素配位子のσ電子受容能は、アルコールの脱水素過程を大きく促進することを明らかにしている。 また、平成24年度では、平成24年度前期までに得られた結果を投稿論文または学会発表で公表することに力を入れた。その結果、これまでに5報の投稿論文が受理されており、さらに2報の投稿論文の投稿論文の作成がほぼ完了した。これらの論文も近日中に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケイ素、ゲルマニウム、スズなどの後周期14族元素を含む高電子供与性配位子の合成を達成することができた。さらに、これらの電子供与能を DFT 法を用いた理論計算およびプロトン移動反応によって、比較評価することができた。これらの結果は、触媒設計を行う上で重要な指針の一つとなり、重要な成果と考えている。またσ電子受容性ボラン配位子を有する錯体を用いることで、電子豊富な Rh(-I) 錯体を創製できることを見出した。その成果もまた有機金属錯体触媒の新しい分子設計の可能性を提案するものであり、アンモニアを用いた触媒反応を開発する上でも極めて有用である。これらの成果から、今後の研究の発展が見込まめるため、おおむね順調に進展していると判断した。 また、Si-O 結合や Si-F 結合の切断反応の発見は、科学的にも大きな意味を持つと思われる。これらの研究を発展させることができれば、ケイ素化合物合成のための新しい合成戦略にすら発展できるものと期待される。新しい萌芽的研究課題を発見できたことも研究の重要な成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、高電子供与性配位子として機能する PEP (E = Si, Ge, Sn) 配位子を有する錯体の合理的な合成法を初めて報告した。その手法を基にして、電子豊富な錯体のラインナップを完成させる。さらに、それらの錯体を用いて、アンモニアを用いた触媒反応の開発に取り組む。 また、平成24年度では、極めて珍しい後周期遷移金属錯体による Si-O 結合および Si-F 結合の切断反応を見出すことができた。これらの反応を触媒反応へと展開することが急務である。ケイ素化合物は、化学工業において極めて重要な地位を築いている。それらケイ素化合物のほぼ全てはケイ砂や石英から金属シルコンへと変換されたのち、有用なケイ素化合物へと変換されている。しかしながら、化学的に安定な Si-O 結合の切断のために膨大なエネルギーを必要とするため、より省エネルギー、高効率なプロセスの開発が求めれている。我々の発見したロジウムヒドリド種を用いた Si-O 結合の切断反応は室温下でも進行することから、その反応を触媒反応へと展開することは極めて重要な課題であると考えている。本年度では、Si-O 結合切断を鍵とした触媒反応の開発を目標とする所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は平成25年度から大阪府立大学での研究を本格的に開始することになる。そのため、器材を補完することが急務となっており、研究費の多くは汎用する試薬、資材および研究器具に利用する。より具体的には、重ベンゼン、重クロロホルム、重THFといった重溶媒から、配位子合成に必要な配位子前駆体、塩化ロジウム結晶、塩化イリジウム結晶などの貴金属を購入する。また、空気に不安定な化合物を扱うための真空ラインの整備にも予算を割く。 加えて、学会等で重要な成果を発表するために、研究費の一部を使用する計画である。
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