2011 Fiscal Year Research-status Report
核酸アプタマーを用いた超高感度電位計測バイオセンサーによる腫瘍マーカー検出
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23750079
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
合田 達郎 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20588347)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アプタマー / バイオセンサー / 腫瘍マーカー / ラベルフリー技術 / 電位計測 / タンパク質 / 自己組織化単分子膜 |
Research Abstract |
電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)の原理によるラベルフリーで高感度な電気化学計測技術を応用して、核酸アプタマーを用いた超高感度電位計測バイオセンサーによる腫瘍マーカー検出に関する研究をおこなった。これは癌にまつわる腫瘍マーカータンパク質(VEGF)の検出を簡易・迅速かつ低コストに達成する基盤技術を提供することで、従来のイムノアッセイに代わる超高感度タンパク質センシング、プロテオミックス解析、翻訳後修飾解析のための新たなプラットフォームを提示する事を目的としている。 実施計画に基づき、初年度は、まず、核酸アプタマーの分子設計および電極表面への核酸アプタマープローブの固定化方法・固定化密度を検討した。また、非特異的シグナル抑制のための固液界面設計を検討した。具体的には、プローブ分子となるアプタマーの固定に関して、固-液界面でのデバイ長の制約を十分に考慮し、より電極近傍にアプタマーを固定化するために、DNAアプタマーの5'末端にチオール基(-(CH2)6SH)を導入し、金電極とAu-S結合を介して直接結合する方式を採用した。プローブの固定化密度は10-100 nm2当たりに1本程度のプローブ密度で制御した。非特異的シグナル抑制のためのバイオ親和性界面の設計を検討した。高感度検出、リアルサンプル検出を達成するうえでは、また、本研究での標的物質がタンパク質であることを考慮すると、材料表面への非特異的吸着に起因するノイズ信号を低減する必要がある。そこで、デバイ長の制約を考慮して、SAM末端にタンパク質吸着抑制効果の高いスルホベタイン基を導入する方法を採用した。標的物質であるVEGFを用いて、電位測定装置によるリアルタイム非標識測定にあたり、アプタマーの高次構造体形成に注意しつつ、VEGFの高感度な検出を実現する条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、1.核酸アプタマーの分子設計および電極表面への核酸アプタマープローブの固定化方法・固定化密度を検討する、2.非特異的シグナル抑制のための固液界面設計を検討する、3.標的物質であるVEGFを用いて、電位測定装置によるリアルタイム非標識検出をおこなう、という上記3つの項目を検討する計画であった。これらの計画に対して、上記の研究実績の概要で示したように、アプタマーの分子設計・固定化条件と固液界面の構築、そしてVEGF分子の高感度検出はそれぞれ達成することができた。この間、さしあたって大きな問題には直面しなかった。したがって、研究は当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、リアルサンプルでのVEGF定量測定を実現する。既報に従い、健全なドナーのヒト、または哺乳動物種全血から血清を分離したのちに使用する。リアルサンプルを用いての定量測定をおこない、センシングの感度・特異性を検討する。感度が不十分な場合は、前処理としてサンプル精製および濃縮を検討する。良好な結果が得られた場合は、申請者の所属する大学の医学部研究者との連携をとり、前臨床データの収集に向けた取り組みを開始する。 次に、集積化デバイスの作製と機能評価を開始する。アレイ化金電極は、基板となるチップの表面に、金スパッタによる薄膜形成とフォトリソグラフィ法によるパターニングによって作製する。多チャンネル同時測定による精度・再現性の向上をねらう。あるいは、マイクロアレイ解析によって、関連する別の腫瘍マーカーとの並列解析をおこなう。 最後に、前述したDNAプローブの高機能化として、ヘアピンアプタマーによるリガンド分子に対する刺激応答性の付与、異なるアプタマー配列をつなげたシリアル解析や、標的分子検出に伴うロジックゲート信号生成についても検討する。ヘアピンアプタマーはステム(幹)とループ(輪)からなり、ステムの一部にアプタマー配列を導入する予定である。異なるアプタマー配列をつなげたプローブの合成に関しては、anti-VEGFアプタマーと例えば、VEGFが腫瘍マーカーとして有効とされている肺がんや卵巣がんにおける腫瘍マーカーに対するアプタマー配列と組み合わせることで、がん判定、予後診断の精度向上に役立つと考えられる。また、異なるアプタマー配列を直列につなげると、原理的には2段階の信号が得られることから、いわゆるロジックゲートのような機能を創出できるか否かも、学術テーマとして取り組んでみる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高感度電位計測をはじめとした一連の電気化学測定装置、蛍光顕微鏡、分析装置、生体サンプル使用設備はすべて所属研究所に現有である。つまり、研究の遂行にあたり必要とされる半導体パラメータアナライザ、ポテンショスタット、インピーダンスアナライザ、周波数特性測定装置、リアルタイム電位測定装置、リアルタイム多チャンネル電位測定装置、および、表面構築に必要なプラズマワッシャー、スパッタ、構築した表面の評価に用いる分光エリプソメーター、ラフネス解析装置はすでに整備されている。したがって、研究費の用途としては、試薬・ガラス器具類・装置消耗品など必要不可欠な経費に充当する。また、全血などのリアルサンプルを購入・取得する費用に使用する。 また、関連する学会に参加して研究成果を発表するための旅費や、論文作成・投稿費用、成果発信のための費用等に用いる予定である。
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