2011 Fiscal Year Research-status Report
顕微ラマン分光法による実作動燃料電池のin‐situ測定に関する研究
Project/Area Number |
23750080
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原 正則 山梨大学, 燃料電池ナノ材料研究センター, 助教 (40457825)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 燃料電池 / 顕微ラマン分光法 / in-situ測定 / 水分布測定 / Nafion / 炭化水素系電解質膜 |
Research Abstract |
本研究では、実作動条件下での燃料電池のMEAを構成する電解質膜の顕微ラマン分光測定を行い、燃料電池セル中の反応挙動と発電性能や劣化挙動との関係について明らかにすることを目的としている。この研究のため、燃料電池の実作動条件下におけるMEAの反応挙動の顕微ラマン分光測定によるin-situ測定用燃料電池セルの設計、作製を行い、このセルを用いた燃料電池の発電特性の評価を行った。さらに、燃料電池の作動条件下(セル温度:40~110℃、ガス加湿度:dry~70%RH、および出力電流値:0~250mA cm-2)において顕微ラマン分光法による電解質膜内のin-situ測定を行い、各測定条件がセル特性に与える影響について評価を行った。さらに、電解質膜にNafionおよび炭化水素系電解質膜であるスルホン化ポリエーテルブロックコポリマーを用い、電解質膜による挙動の変化についても比較を行った。燃料電池セルを用いた顕微ラマン分光測定においては、特に電解質膜の断面方向のマッピング測定を行い、セル作動条件による電解質膜中の水分子の分布状態の変化について測定を行った。ラマン分光測定より、電解質膜中における生成水の逆拡散と電気浸透水の挙動が、電解質膜中の水分布に大きく影響することが明らかとなった。さらに、これらの電荷室膜中の水の挙動と燃料電池の作動条件(出力電流値、供給ガス加湿度、ガス利用率、セル温度)との関係や、用いる電解質膜の種類による影響についても情報を得ることが出来た。今回得られた測定結果は、MEAの反応挙動の解明だけでなく、セルの作動条件の最適化や電解質膜用の新規材料の開発のための指針となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画においては、顕微ラマン分光測定法を用いて実作動中の燃料電池内におけるMEA中の水分布や反応挙動および劣化挙動について解明することを目的としており、研究の一年目においては、(1)顕微ラマン分光測定用燃料電池を用いた電気化学測定によるセル特性の評価、(2)顕微ラマン分光測定結果の解析のためのリファレンスデータの取得、(3)顕微ラマン分光測定による燃料電池の発電条件とMEA中の反応挙動の関係の解析を行うことを計画していた。研究の達成状況として、(1)については顕微ラマン分光測定用燃料電池の製作を行い、このセルを用いた電気化学測定より、電解質膜にNafionおよびスルホン化ポリエーテル(SPE)を使用したMEAの特性の評価を行った。さらに、得られた特性評価結果をもとに顕微ラマン分光測定を行う際の各作動条件(セル温度、供給ガス湿度、出力電流など)を決定した。(2)についてはセル作動条件下における顕微ラマン分光測定に先立って、40~110℃の作動温度において相対湿度をdry~90%RHに制御したN2ガスをセル中にパージした条件にて電解質膜(NafionおよびSPE)のスペクトルの測定を行い、各電解質膜のラマンスペクトル解析用のリファレンスデータを取得した。(3)については様々な各作動条件下において顕微ラマン分光測定を行うことにより、燃料電池の作動条件と電解質膜(NafionおよびSPE)中における含水量分布の関係について測定を行った。この測定より、カソードにおいて発電に伴い生成する水が電解質膜の加湿状態に与える影響を明らかとした。さらに、電解質膜による比較を行い、各電解質膜での挙動の違いについても検討した。このように、研究計画の一年目に予定していた測定については、ほぼ計画通りに遂行できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の一年目の計画においては、ラマン分光測定用燃料電池の作製と、作製したセルを用いた燃料電池作動条件下における顕微ラマン分光法によるin-situ測定より、燃料電池の発電条件とMEA中の水分布挙動の関係の解析を行った。本研究の二年目においては、(1)顕微ラマン分光測定用の燃料電池セルの改良、(2)燃料電池内のMEAの劣化挙動と顕微ラマン分光測定結果の比較による劣化機構の解明を行うことを計画している。顕微ラマン分光測定用の燃料電池セルの改良では、一年度目の研究において得られた測定結果を元に、特に二年度の主な研究課題となる劣化機構解明の測定に適した長期の安定作動が可能なセルの作製を行う。顕微ラマン分光法による燃料電池内のMEAの劣化機構の解明では、MEAの加速劣化試験(負荷変動および起動停止試験)と顕微ラマン分光測定法による電解質膜の測定を同時に行うことにより、MEAの劣化による発電性能の低下に伴う電解質膜のスペクトル変化や水分布への影響を明らかにする。さらに劣化過程におけるスペクトル変化について定量的な解析を行い、MEA中での電解質膜の劣化機構の解明につなげる。また、一年目の研究課題であった顕微ラマン分光測定による燃料電池の発電条件とMEA中の反応挙動の関係の解析についても、(3)新規の炭化水素系電解質膜(スルホン化ポリケトン、スルホン化ポリイミド等)を用いてラマン分光測定による反応挙動の解析を行っていくことを計画している。さらに、本研究で得られた研究成果について、国内外での学会発表、科学雑誌への論文投稿、および当センター主催の燃料電池ワークショップやサマーセミナーでの研究発表を通して報告を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の二年目においては顕微ラマン分光測定用の燃料電池セルの改良、および燃料電池内のMEAの劣化挙動と顕微ラマン分光測定結果の比較による劣化機構の解明を行うことを計画している。この研究計画の遂行に当たり、研究経費として顕微ラマン分光測定用燃料電池の改良、および測定に用いるセルの構成に必要な構成材料の購入費を消耗品費として、また各部材の加工依頼費用をその他の経費として計上している。1セル当たりの作製費用は一年目の測定で使用した顕微ラマン分光測定用燃料電池を作製した際の材料費および加工費を元に計算し、必要と予想されるセル数から経費を決定している。また、MEA作製や電解質膜の化学処理等に必要と考えられる材料や試薬類、測定に用いる高純度ガスボンベおよびガス配管用のパイプ類の購入費を消耗品費として計上している。さらに、本研究で得られた研究成果についての学会発表の出張費用も併せて研究費として計上している。
|
Research Products
(3 results)