2011 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリン金属錯体を用いたX線増感型ガン治療法の開発
Project/Area Number |
23750192
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
廣原 志保 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (70413804)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | X線増感剤 / trans-2置換グルコース連結ポルフィリン / 子宮頚部ガン由来細胞株(HeLa) / 薬剤取り込み / 細胞毒性 |
Research Abstract |
本研究課題では、人体に影響のない程度の低線量でガン細胞のみを死滅させるX線治療のためのX線増感剤の開発を進めている。本年度は、2分子のグルコースを様々な連結法でトランス配置したtrans-2置換グルコース連結ポルフィリンの合成法の確立と子宮頚部ガン由来細胞株(HeLa)を用いた細胞取り込み試験および細胞毒性(暗所毒性)試験を行った。合成:trans-2置換グルコース連結ポルフィリンの合成法の確立:亜鉛及び白金含有S連結体、フリーベースO連結体ならびにフリーベース、亜鉛及びパラジウム含有トリアゾール連結体の2置換体合成を行った。反応させるポルフィリンおよびグルコース誘導体(AcGlcSAc, AcGlcOH, AcGlcN3)の量、溶媒、触媒等の検討を行い、それぞれの連結体(S, O, トリアゾール)の合成法の最適化に成功した。細胞への薬剤取り込み試験:HeLa細胞株(1x10^6 cells/well)に0.5 microMの合成したtrans-2置換グルコース連結ポルフィリン誘導体(S, O, トリアゾール連結体)を添加し24時間薬剤接触後の細胞への薬剤取り込み量を、各連結体の他置換体(1, cis-2, 3, 4置換体)と比較した。その結果、亜鉛含有S連結体はどの置換体でも薬剤取り込み量に差は見られなかったが、それ以外のポルフィリン誘導体では、金属の有無、連結部位に関わらずtrans-2置換体が他置換体よりも数倍高い薬剤取り込み量を示すことが分かった。細胞毒性試験:合成したすべてのtrans-2置換グルコース連結ポルフィリン誘導体は薬剤濃度1 microM以上でも暗所下では細胞毒性を示さなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発予定していたX線増感剤の条件である、高いX線増感能を示す重金属(白金やパラジウム)含有ポルフィリン誘導体を合成法を確立でき、またどの連結体においても高い細胞取り込みを示す置換体はtrans-2置換体であることを見出すところまで進んでいる。これらの結果より、研究開発はおおむね順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在X線増感剤の候補として開発しているtrans-2置換グルコース連結ポルフィリン誘導体は可視光により高い光細胞毒性を示してしまう。光細胞毒性の原因となる一重項酸素の阻害剤を導入したポルフィリン誘導体の合成を行い、細胞毒性試験ならびにX線増感試験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
阻害剤の誘導体およびそのポルフィリン誘導体の合成のために合成試薬を15万円、また合成した化合物の細胞評価のための細胞培養用試薬15万円、細胞培養用器具15万円を計上した。また今年度から宇部高専に転任したため、X線照射装置を奈良先端科学技術大学院大学に出張して実験を行わなければならないので、調査費を含めた旅費を13万円と計上した。そのほか、成果報告として英文校正費を5万円と計上した。
|
Research Products
(1 results)