2012 Fiscal Year Research-status Report
DNA上の疎水空間配列を用いた機能分子集積法の開発
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23750198
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高田 忠雄 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60511699)
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Keywords | DNA / 超分子 / 発光 / 電子移動 / ナノデバイス |
Research Abstract |
これまでに、超分子化学的アプローチに基づき、シンプルかつ効率の良い分子修飾法の創出を目指し、DNA中の塩基対を除くことで分子結合場として“余分な疎水空間”を人工的に創り、この空間を利用してDNA上に機能分子を固定・集積する研究を行なってきた。その中で、分子間の会合力が非常に強いカチオン性ペリレンジイミド(PDI)が、疎水空間に選択的に(ほぼ100 %)、かつ非常に強く結合(109 M-1以上)することを見出した。さらに検討を重ねた結果、一つの疎水空間に対して一つ分子が結合し、空間の数とその配置に応じて分子が自発的にDNAのπスタック内に並ぶことが明らかとなった。これらの結果は、DNA中の疎水空間をテンプレートに利用すれば、機能分子とDNAを共存させるだけで自在にDNAの分子修飾が可能であること、DNA上への精密な分子配列・集積が可能であることを示している。同様に、疎水性が強いポルフィリンをリガンドとした場合においても空間への特異的な結合が観測され、さらに、空間内で電子ドナー性分子とアクセプター性分子がペアーを形成し電荷移動錯体が特異的に形成されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ構造体構築の分子材料としてDNAは注目されており、DNAを利用したデバイス作製を目的として、機能分子をDNA上に配列・集積した機能性DNAの作製に関する研究が行ってきた。機能性色素として、ペリレンジイミド誘導体(PDI)をリガンドに用い、DNA内部に導入した疎水空間を利用してPDIをDNA上に配置することを行うとともに、空間に結合したPDI誘導体の光化学的性質について調べた。スペーサー分子(dS)を用いて、平面分子が結合できる疎水空間を持つDNAを作製した。自己会合性が強いPDIをリガンドとして用い、PDIの吸収スペクトル変化から疎水空間へのPDIの結合について調べた。疎水空間を有するdS-1およびdS-2を存在させた場合においてのみ有機溶媒中で観測されるPDIモノマーと一致する吸収スペクトルが観測され、スペクトル変化の滴定実験から、疎水空間に対して一つのPDI分子が特異的に結合することが分かった。次に、空間に結合したPDIの発光スペクトルを観測した。PDI(X=H)では疎水空間を持たないdS0および近傍にGが存在するdS-1ではPDIは発光をほとんど示さず、Gが離れたdS-2のときに発光が見られたたことから、Gで強く消光され、Aで弱く消光されることが分かった。同様に、PDI(X=OR)においてもGによって大きく消光されるが、dS-2においては強い発光が観測され、置換基導入によって電子受容性が弱められることで電子移動消光が抑えられることで強い発光を示すことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の設備と合成済みDNAサンプルを用いて複合体作製に関する基礎的な実験を行うことができたこと、またその複合体の光化学的特性に関する評価を行った。また、研究計画の予定としていた光デバイス評価に関する実験まで進むことができなかったため、結果として初年度の予算に残額が生じた。翌年度の研究費と合わせて今後は予定通りデバイス評価に関わるサンプル作製・設備導入に使用し、実験を進めていく計画である。具体的には、疎水空間と機能分子の設計に関する研究を重点的に進める。選択的に空間に結合し、DNAを大きく安定化する複合体を探索するとともに、空間内での分子の配向、分子間の相対的な配向、またその物性を各種分光法を用いて検討する。また、機能性色素の発光特性、電子移動特性について時間分解分光法等を用いて詳細に明らかにしていく予定である。これらの分子を用いた一次元・二次元分子配列および構造体作製を行い、機能分子の配列を通じた新たな機能発現と光デバイス作製へと研究を展開する計画である。また、PDI以外の分子として、ポルフィリン分子の集積、異なるDNA構造を用いた分子集積も合わせて検討する。これらの機能性色素を一次元に配列させたDNA複合体を作製し、その光物性および電気的特性を詳細に調べ、DNAを用いた分子ナノデバイスへの応用を試みることを研究計画にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
種々の置換基を導入した有機色素分子およびDNA内部に組み込むサイズと環境の異なる疎水空間の設計を行うため有機合成関連の実験が中心となるため、有機合成試薬に関わる物品費等に研究費を使用する計画である。複合体の結合評価と構造評価等を行うためのDNAサンプル合成のための核酸合成試薬の購入経費および実験消耗品経費として使用する計画である。また作成したDNA色素複合体を用いたDNA光デバイス作製を行う計画であるため、DNAを修飾し、光電応答を観測するために必要な電極購入および設備備品として光電気化学測定実験用のフィルター、光源購入に研究費の一部を当てる計画である。
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Research Products
(5 results)