2011 Fiscal Year Research-status Report
臨界点近傍ヘリウムの高圧縮性がもたらす複雑熱流動場のダイナミクスと伝熱制御
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23760197
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岡村 崇弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (90415042)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 乱流遷移 / 直接数値シミュレーション / 渦構造 |
Research Abstract |
一般に臨界圧力より高くかつ臨界点近傍における流体は、臨界現象に起因して(1)熱が音波として伝わるピストン効果、(2)プルームと呼ばれる浮力流や気液二相流のように振舞う擬似沸騰現象という特異な熱輸送特性を有する。また臨界点のごく近傍で高圧縮性によりbulk粘性が無視できない有限量となりStokes 仮定が破綻することが理論から予測されている。本研究では、臨界温度を約5.2Kにもつヘリウムの(1)や(2)のような特異性が共存した流れ場に、bulk粘性の効果が加わった場合の熱対流により発生する乱流場の発達の様子・伝熱形態を渦構造に着目することにより明らかにすることを目指す。また工学的応用として、伝熱特性向上を目指した主にpassiveな伝熱制御法を見出すことも目的の1つである。 今年度は上記目的を遂行するために不可欠な直接シミュレーションコードの作成を中心に行った。シミュレーションはbulk 粘性を含む3次元系圧縮性流体方程式を基礎方程式に用いるが、これを実行するにあたりいくつかの困難がある。その1つに着目系は早い現象と遅い現象の共存系で時間刻みは常に早い現象に支配されてしまう点、また流れ場の微細渦構造までを捉えるためには必要な格子解像度を細かくしなければならない点がある。これは計算負荷の増大をもたらす。また計算を安定に実行させる上で出現しがちな人工的な拡散項により微細構造が鈍化されないスキームを導入する必要がある。本研究は主流方向に対して流れの周期性は仮定しない空間発展型となるため主流方向に対して擬スペクトル法は適用しない。そこで本研究では上述の困難を回避するために、(1)並列化等を用いた高速化、(2)Pade expansionを用いたcompact difference schemeを用いたプログラムを開発している。H23年度はプログラムの完成には至らず引き続きH24年度も開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プログラム高速化に必要なGPGPUを用いた計算コードの開発が滞っている。GPU計算コードの開発手順としては、単純に従来のCPUで動かすことのできる計算コードの開発をまず行い、この段階でバグだしを行う。次にこの妥当性が確認されたコードを用い、最終目標であるCUDAで計算コードを再構築をするといった手順である。しかしCUDAは従来あるFORTRANのような概念と少し異なっているところがあり、GPGPUを用いた計算コードの構築が少し難航しているのがやや研究が遅れている主な原因である。これを打開するためにH23年度後半からCUDAに関するセミナー等に出席し情報の収集にあたってきた。H24年度も引き続き必要に応じて研究会・ワークショップに参加し必要な情報の収集を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続きシミュレーションコードの開発を行う。今年度上旬までに計算コードを完成させる予定である。CUDAを用いたGPGPU計算プログラムの構築が思うように進んでいない点に関しては、H23年度後半からCUDAの専門家が主催するセミナーに出席し、不足している知識・情報を補ってきたが、H24年度に関してもCUDA専門家にセミナーを行ってもらい、計算コード構築を終了させる予定である。合わせて実験装置のセットアップも行う。今年度に臨界点近傍ヘリウムの実験を行う予定である。また今年度は研究成果に関して国内学会で主にシミュレーションから得られた予測結果に関して発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度から行ってきている計算コードの構築を行う。計画の一番の難点はCUDAを用いたGPGPU計算コードの構築である。これに関してはH24年度に関してもCUDA専門家にセミナーを行ってもらう・技術的なサポートを付けるなどして解決する予定である。こうした技術支援・サポート費用も今年度の支給予算でまかなわれる。また上記のプログラム開発と並行して実験装置のセットアップも行う。この中でTest channelの制作が含まれているが、これに関してはH23年度に使用予定であったtest channelの制作費用を用いて行う予定である。クライオスタットに関しては現在高エネ研にある既存のもので行う予定である。
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