2012 Fiscal Year Research-status Report
臨界点近傍ヘリウムの高圧縮性がもたらす複雑熱流動場のダイナミクスと伝熱制御
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23760197
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岡村 崇弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (90415042)
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Keywords | 臨界点近傍 / DNS / ヘリウム / Piston効果 / 乱流遷移 / 乱流統計量 |
Research Abstract |
H24年度は臨界点近傍ヘリウムの開いた系における自然対流中の乱流遷移並びに乱流変動成分の統計量を取得するために空間発展型DNSを主に行った。開放系に着目することで、これまで実験的に明らかにされてきた熱伝達・速度・温度の平均量に関する普遍則とDNS結果を比較し,作成したコードの妥当性を検証した。また変動に関するレイノルズ応力等の相互相関関数は乱流平均場を決定するために必要な統計量である.DNS結果を解析した結果,変動成分のRMS値ならびに2次の相関量のチャネルノーマル方向分布はこれまでの通常の自然対流分布とほぼ同じになることを確認した.また変動速度成分の1次元エネルギースペクトルを計算した結果,境界層温度場対数領域での慣性領域は波数の-5/3乗になりコルモゴロフ則に従っていることを確認した。臨界点近傍ヘリウムのPr=3~5、Ra=1E11~1E12程度の乱流場での伝導底層・粘性底層が10umオーダーになる明らかにし、また散逸率からコルモゴロフスケールのノーマル方向分布を求めた.これらの開いた系における確認された知見に関しては論文にまとめる予定である. また閉じた系においてはPiston効果が発熱面から離れたバルク流体へ及ぼす影響を無視することができない.厳密にシミュレーションするためには一般状態方程式と圧縮性流体方程式を直接計算することになるが,計算負荷を考えるとこの直接計算は膨大な時間がかかってしまい,現状の計算環境を考えると不可能である.そのためPiston効果によって生じる場の影響については平均場的なモデルを導入することで,Piston効果と対流の共存場が計算できるコードを自作した.コードは億のオーダーの自由度を高速に計算するため,CUDAアーキティチャーを用いて作成し,H25年度ではPiston効果と対流共存場に関する解析をGPGPU計算機を使用して行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
若干遅れ気味である.理由はGPUを用いた並列化コードの作成に時間がかかってしまったためである.またGPU計算を実施できるようになってからも,GPU上のグローバルメモリの制約により大きな自由度におけるDNSができなくなった.そこでH24年度に行った対処法としては,現在の計算機の環境で大自由度計算を行えるように,計算手法をGPGPUのメモリを考慮して低ストレージなコードに変換した.この変換は一種の計算精度の低減をもたらしてしまう.これの問題に関してはH25年度で新たにGPUを計算機に追加することで対処する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は本研究の最終年度にあたる.年度前半では,臨界点近傍ヘリウムの閉じた系におけるPiston効果,対流共存場について,GPU並列計算コードを用いてシミュレーションを行う.また計算条件に依存するが比較的大きな自由度になると現在の計算リソースではGPU上のグローバルメモリの制約から計算が不可能になるため,GPGPU等のハードウェアの拡張も並行して行う予定である.またH24年度には計算の妥当性の検証を行うために制作したテストチャネルを用いて実験も行う. 発熱体から遠いバルク部に圧縮性の効果が陽に現れるPiston効果ならびに対流が共存している系における乱流諸特性の解明を行い,得られた知見から工学的に適用可能な乱流モデルの構築,モデリングを行う予定である.この際従来のモデルに対して補正項を加える方法が最も単純であるがこの際の補正項の物理的意味を明確にする. 研究成果の発信に関して,まずはH24年度に実施した開いた系の自然対流場の乱流諸特性に関して研究論文にまとめて投稿する.またH25年度前半に実施した研究に関しても,得られた知見を学会で発表すると共に閉じた系と開いた系の流れ場の共通点・相違点をまとめた論文を投稿する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度が研究を総括する最終年度に当たる.研究予算は今後の研究推進策で記したように計算機ハードウェアの追加拡張ならびに研究成果発表並びに論文投稿費に使用する予定である.予算配分はハードウェア拡張など具体的な研究推進に予算全体の70-75%,研究成果発表に全体の20%,投稿論文の投稿費用などに5-10%あてることを計画している.
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