2011 Fiscal Year Research-status Report
磁気浮上搬送制御のための三次元位置推定および浮上・搬送制御の実現
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23760396
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 義光 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40509270)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 制御システム / 磁気浮上搬送 / 三次元位置推定 / オブザーバ |
Research Abstract |
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,本研究の特徴として,電磁石の電流値と磁極部に配置したホール素子の電圧値の情報を用いて,浮上・搬送制御に有効な三次元位置を推定するものである.そこで,当該年度では,その三次元位置推定方法を実現するため,磁気浮上搬送の実験装置の製作と,浮上物体の三次元位置変化におけるホール電圧分布の計測と関係式の導出を実施した. 実験装置として,4個のホール素子を小型基板に配置して,電磁石の磁極部に小型基板を設置し電磁石の駆動回路と電流およびホール素子の測定回路を製作し,電磁石への制御電圧は,開発PC搭載の制御ボードのD/A変換からアンプ回路を経由して印加し,電流とホール電圧は制御ボードのA/D変換によって計測する環境を構築した.また,浮上物体の3次元位置変化のホール電圧変化を測定するため,精密XYZ自動ステージ上に浮上物体を固定し,XYZステージも制御ボードから駆動することが可能である. 予備実験より電磁石の電流と浮上物体の3次元位置を変化させたときの各ホール電圧を測定することで,3次元位置とホール電圧の関係を解析した.実験結果より,鉛直方向に対して反比例,水平方向に対しては定常値付近で比例の関係があることを明らかにし,関係式を導出した.その関係式を用いて磁気浮上系の数学モデルを導出し,最適制御理論を適用することで,3次元位置推定と安定浮上が実現できることを理論と実験により明らかにした.課題として,予備実験による測定誤差が推定に大きく影響するため,測定時の原点の設定などの見直しが必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,計画している具体的な研究解題は,(1)三次元位置変化におけるホール電圧分布の計測と関係式の導出,(2)浮上時の安定性を確保した三次元位置推定の設計と実験評価,(3)推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した制御設計と実験評価,の3つである. 当該年度の計画としては,研究課題(1)の三次元位置変化におけるホール電圧分布の計測と関係式の導出であったが,計画通りに実施することができ,研究課題(2)の安定浮上の実現まで実験検証することができた.また,研究課題(3)の搬送制御の検証を行うための準備として,水平方向に移動可能な2軸ステージを導入し,1軸方向のみ速度制御によって可動できるスライダ機構を構築し,磁気浮上系の1軸方向のみの搬送実験の環境を実現した.しかしながら,スライダ駆動時のモータのノイズがホール電圧の測定に大きく影響し,ノイズによって3次元位置推定の精度が劣化する問題が明らかになった.また,ホール電圧の関係式のパラメータ測定時に原点の設定が推定精度に大きく影響することが分かり,測定方法の見直しが必要であると考える.以上より,当初の計画通り研究課題(1)を実施し,研究課題(2)および(3)の準備も進めることができたが,研究課題(1)の測定方法の見直しが課題として残ったため,達成度としては,「おおむね順調に進展している」と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,磁気浮上搬送制御に利用可能な三次元位置推定方法およびその推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した設計方法を確立することであり,今後の研究としては,平成24年度には,まず平成23年度に得られた結果を学会発表および論文投稿し,研究課題(2)浮上時の安定性を確保した三次元位置推定の設計と実験評価に取り組む計画である.平成25年度には,研究課題(3)推定値を用いた浮上制御と搬送制御の干渉を考慮した制御設計と実験評価を計画する予定である. 平成24年度の研究計画課題(2)では,ホール素子の関係式の近似誤差を制御系の安定余裕を大きく確保することで補う方法を提案するが,その他にモータ駆動によるノイズの影響や原点の設定誤差によるパラメータの測定誤差の問題が明らかとなった.そこで,研究課題(2)の実施の他にノイズの影響を考慮した制御設計の検討とホール素子の関係式導出のための予備実験の見直しを行うこととする.また,搬送制御においては,水平2軸方向の搬送実験の環境を構築し,制御系として搬送制御と振れ止め制御を同時に実現する2自由度制御系を設計し,三次元位置推定の水平2軸方向の推定値が,搬送時の振れ止め制御に有効であることを実験と理論によって検証する.また,平成25年度の研究課題(3)の準備として,磁気浮上系の水平2軸方向の移動に加えて,鉛直方向の移動も実験装置に加えることを検討する. 平成25年度には,独立に設計した浮上制御と搬送制御がどのように影響を与えるかを検討し,また同時に設計問題を考えることで,制御性能の向上が得られるかを理論と実験により検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題(1)の予備実験において原点設定の問題が挙げられたため,計測方法の見直しに治具や測定回路の再設計を予定している.また,ノイズの影響も問題として挙げられたため,駆動回路や測定回路の再設計も検討する.また,2軸スライダのハードウエアは準備できたため,速度制御による移動を実現するための配線作業を予定している.また,研究課題(3)の実験準備として,磁気浮上系の鉛直方向の移動を実現するためのスライダの導入を検討する.制御設計として,MATLAB/Simulinkを用いるため,年間保守費用に更新を必要とする.さらに,平成23年度は実験装置が構築でき,実験検証も得られたので,平成23年度の研究成果を学会発表するための旅費および論文投稿のための費用を必要とする.以上,実験準備と,ソフトウエア保守,旅費および論文投稿費用に次年度の研究費を使用する計画である.
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