2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760614
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
小出 祐子 京都精華大学, デザイン学部, 講師 (50593951)
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Keywords | 遷宮 / 造替 / 賀茂別雷神社 / 上賀茂神社 / 江戸時代 |
Research Abstract |
本研究の目的は、江戸時代を通して行われた8度の賀茂別雷神社遷宮(造替)に関し、社殿の破損が造替の契機になったという従前の見解を新史料から再考し、賀茂社における江戸時代の遷宮の意義について、新たな知見を得ることにある。 2012年度は、前年度の研究成果を日本建築学会などで公表すると共に、8度の遷宮に関するデータベース作成を進め、各遷宮に関連する史料を精読した。その結果、史料内容に疎密があり、とくに本宮以下舎屋のほとんどを一新した江戸時代最初の寛永度遷宮と、18世紀後半の安永度遷宮に記述が集中することが判明した。そこで修復関連の内容を多く含む安永度遷宮に対象をしぼり、遷宮願書に認められた「大破」の文言をめぐる名目と実情の齟齬について考察をすすめた。各社殿の具体かつ詳細な修復の仕様を記す安永5年(1776)の史料を中心として、摂社7社の修復内容を検討した結果、先の寛保度以来36年ぶりとなる当遷宮では、材の取替えを要する箇所は屋根廻りが中心で、その他は破損部位を限定的に補修するにとどめる、という傾向が見いだされた。 その一方で、当遷宮の発願は実際の修復が行われた時期より17年~18年ほど前に遡り、その名目はほぼ一貫して「社殿大破」にあった。これを文言通りうけとるならば、発願してからすでに20年近くを経るなかで、破損の状況は一層すすんでいたことが推測される。それにもかかわらず、実際の修復が上述したような簡易ともいえる補修であったことは、そもそも遷宮を実現させるまでに長期化することを見越した出願であった――すなわち、遷宮は出願文面にあるような喫緊の修復を実態として要するものではなく、形式的な意味合いの強いものだったと考察するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を進めるうえで、これまでに収集・撮影した賀茂別雷神社の造営関係史料から遷宮に関わる記述を抄出し、記事のデータベース化を行うという基礎作業がある。この過程において、収集史料の記述内容に精粗のばらつきがあり、各遷宮に共通するデータベースの枠組みを見直すなどの必要があった。そのため作業の一部を当該年度に持ち越し、進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
データベース化した賀茂別雷神社の遷宮関連史料の内容を精査した結果、遷宮によっては修復着手時期及び完成年月日などの基本情報が中心で、当社所蔵史料のみでは造営の経緯を考察するに十分とはいえないケースが確認された。このため、それらを補完する関連史料の渉猟が課題である。あわせて、研究最終年として研究成果のとりまとめ、公表に向けての準備をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述した関連史料渉猟に要する旅費、複写費等を次年度に使用する。また、新たに収集した史料に基づく研究考察のために必要な関連図書、研究成果発表に要する学会参加費、旅費等にかかる経費を研究費未使用額から充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)