2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23760630
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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Keywords | 骨修復 / 骨再生 / リン酸カルシウム |
Research Abstract |
病気や事故による骨欠損の回復は、術後の患者の生活の質(QOL)の向上に欠くことのできないものである。本研究では、自家骨や細胞移植を伴わなくても早急な骨再生が期待できる骨修復材料の開発を目指し、骨に働きかけ再生を促す吸収性骨修復材料を創製することを目的とした。湿式法を利用し、固溶限界以下で種々の量のケイ酸を含有するリン酸三カルシウムの合成に成功した。ケイ酸を含有するリン酸三カルシウムからなる焼結体をヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液に浸漬したところ、ケイ酸を添加しないリン酸三カルシウムに比べ、表面での水酸アパタイト形成が促進する傾向が見られた。これは、ケイ酸添加によりリン酸三カルシウムの骨結合性が向上する可能性を示す。また、ケイ酸を添加したリン酸三カルシウム粉末の成形体を水熱処理したところ、柱状粒子からなるカルシウム欠損組成の水酸アパタイトを得ることにも成功した。一方、水熱合成した水酸アパタイトにおいては、カルシウム欠損組成の大きい水酸アパタイトほど、酸性緩衝液中で溶解しやすいことも明らかにした。これは、生体内において水酸アパタイトが破骨細胞によって吸収される際に、カルシウム欠損組成の大きいものほど吸収されやすい可能性を示す。ケイ酸を添加したリン酸三カルシウム粉末を水熱処理して得られるカルシウム欠損組成の水酸アパタイトは、吸収性の骨修復材料として期待できる。これらの知見は、骨に働きかけ再生を促す吸収性骨修復材料の創製をするにあたり、基礎的な材料合成プロセスの確立と得られた材料の特性評価を行えた点で、非常に有用であった。
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