2011 Fiscal Year Research-status Report
石油備蓄基地施設から分離した腐食菌およびその他新規微生物の微生物分類性状の解析
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23770095
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯野 隆夫 独立行政法人理化学研究所, 微生物材料開発室, 協力研究員 (50550323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 分類群 / 微生物腐食 / 鉄腐食 / 硝酸塩還元菌 / Prolixibacter |
Research Abstract |
FOXM培地で培養した灌水の集積培養物から未知の古細菌が検出された。この未知古細菌が金属腐食に関与するか検討するため、集積培養物からの純粋分離を試みた。集積培養物の16S rRNA遺伝子解析を行った結果、この未知古細菌は湾岸の堆積物から検出されたクローンと最も近縁で、海洋由来の古細菌であることが示唆された。この未知古細菌の他、集積培養物中にはMethanolobus sp.やClostridium 様細菌などが含まれていた。未知古細菌の培養性状解析と混在する微生物除去のために供試培地の改変を行った。その結果、未知古細菌は硫酸塩を必須に要求する硫酸塩還元菌であると考えられた。また、硫化ナトリウムやシステイン塩酸塩を電子供与体として利用していると考えられた。FOXM培地にはFeCl2が含まれていたが、Fe2+を必須には要求しなかった。炭素源として酵母エキスとペプトンを要求した。これらの結果に基づいて、供試培地の改変を行い、未知古細菌の安定した培養に成功した。さらに、継代培養を繰り返した結果、Methanlobus sp.が除去されたことが明らかとなった。今後、更なる培地の改変を行い、残るClostridium様細菌の除去を試みる予定である。一方、鉄腐食性硝酸塩還元菌であることが明らかであったMIC1-1株の生理機能の解析を行った。利用できる電子受容体を解析した結果、MIC1-1株は硝酸塩以外に酸素 (O2) を利用できることが明らかとなった。対象となるP. bellariivorans JCM 13498 は酸素を利用できるものの硝酸塩を利用できないことが明らかとなり、MIC1-1株が新規のProlixibacter属細菌である可能性が示された。このことから、鉄腐食能はMIC1-1株の特徴であると考えられ、硝酸塩還元能が微生物腐食関与への一つの指標であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標は、未分離の細菌・古細菌の純粋分離を目標とし、分離株中最も分離難度が高いと考えられた未知古細菌の培養性状を特定しつつ、純化を試みた。結果として、純粋分離にまで至らないものの、本古細菌が硫酸塩還元菌であることが示唆された。また、混在するメタン生成古細菌の除去に成功し、徐々に純化に至っていることから、概ね予定どおりの達成度である。本古細菌の純粋分離については、今後も継続的に実施する予定である。古細菌の純粋分離には時間を要することが想定されていたことから、平成24年度の計画である「腐食菌の微生物分類学的性状の解析」を先行して実施した。供試菌株として、過去の実験で既に鉄腐食能を有することが明らかとなっているMIC1-1株と系統的にほぼ同一のMIC1-4株の2株を用いた。16S rRNA 遺伝子解析により、これら2株はProlixibacter bellariivorans と近縁であることが明らかとなったことから、菌株保存機関の理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(理研BRC-JCM)から P. bellariivorans JCM 13498 を入手した。現在までに形態観察、利用できる電子受容体などの生理性状などを解析した。先行して実験を実施し、研究に必要な菌株も入手していることから、達成度としては順調である。今後は、さらに生理性状を明らかにし、化学分類学的特徴を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の実験で既に鉄腐食能を有することが明らかとなっているMIC1-1株と系統的にほぼ同一のMIC1-4株の微生物分類学的性状の解析を実施する。暫定的な 16S rRNA 遺伝子解析により、これら2株はBacteroidales目に含まれることが明らかとなっている。本分類群の中で腐食菌の報告例は過去になく、本菌の鉄腐食機構は過去に報告されたものとは異なっている。このような微生物に対して、鉄腐食機構の解明のみならず、微生物分類性状を明確にすることは、迅速な防食対策を開発する上でも重要となる。昨年に引き続き、本腐食菌の形態学的特徴を明確にする。その他、生理・生化学性状、化学分類学性状、分子遺伝学性状を解析し、分類学的位置を明確にする。対照株として、Prolixibacter bellariivorans JCM 13498Tを用いる。また、昨年より継続中の未知古細菌の純粋分離を引き続き実施する。方針としては、未知古細菌の炭素源要求性を確認する。その後、抗生物質を単独もしくは混合で添加し、混在する細菌の除去を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額:1,660,000円昨年度、インキュベーターを複数台購入予定であったが、仕様をより満たすと考えられたインキュベーターが発売されたことにより、1台の購入に留め、精度の確認を行なった。その結果、仕様を満たすことを確認できたため、平成24年度は本インキュベーターを追加購入する。また、平成24年度に購入予定とした遠心分離機も予定どおり購入する予定である。消耗品、旅費なども変更なく仕様する予定である。
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