2012 Fiscal Year Research-status Report
石油備蓄基地施設から分離した腐食菌およびその他新規微生物の微生物分類性状の解析
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23770095
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯野 隆夫 独立行政法人理化学研究所, 微生物材料開発室, 協力研究員 (50550323)
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Keywords | 分類群 / 微生物腐食 / 鉄腐食 / 硝酸塩還元菌 / Prolixibacter |
Research Abstract |
原油から分離した鉄腐食性細菌MIC1-1とMIC1-4の形態学的性質、生理・生化学性状・化学分類学性状を決定した。これら2株は通性嫌気性、非運動性、無芽胞、カタラーゼ陰性のグラム陰性菌であった。形態学的には、幅0.3-0.5 um、長さ3.4-6.3 umの桿菌であった。至適の生育温度、pH、塩濃度はそれぞれ35-37ºC、pH 6.5、2 % (w/v)であった。また、炭素源(D-グルコースや有機酸など)を必須に要求し、電子受容体に硝酸塩と酸素を利用できる硝酸塩還元菌であった。主要脂肪酸組成はC15:0とanteiso-C15:0であった。イソプレノイドキノンタイプはMK-7であった。DNA G+C含量は44.7-45.0 mol%であった。16S rRNA遺伝子塩基配列に基づく系統解析を行った結果、MIC1-1株、MIC1-4株はBacteroidales目に含まれ、海洋堆積物から電気培養で純粋分離されたProlixibacter bellariivorans F2と共にBacteroidales目内で独立した系統群を形成した。系統的な近縁種はP. bellariivoransであったが、その相同性は97.2%と低く、新規のProlixibacter属細菌であると考えられた。 一方、昨年度から実施している未知古細菌の純粋分離は大きな進展は見られないが、集積培養は安定している。電子供与体に水素を利用する可能性が考えられたため、水素を含む集積培養系での生存を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度春に所属開発室の筑波研究所移転が決まったため、数ヶ月間の実験停止を余儀なくされたが、平成23年度から前倒しで実験を進めていたため、全体の達成度としては順調である。 平成24年度の目標は、鉄腐食細菌の分類学的性状決定であり、鉄腐食性Prolixibacter sp. 2株の形態学的特徴、大半の生理・生化学性状、化学分類学的性状の解析を終えた。残るは電子受容体試験、電子供与体試験、リン脂質分析のみである。 未知古細菌については、分離株中最も分離難度が高い中、徐々にではあるが培養条件の特定につながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄腐食細菌2株の新種提案に必要な残る解析 (電子受容体試験、電子供与体試験、リン脂質分析) を実施する。その後、近縁種である Prolixibacter bellariivoransとの識別を明確にし、新種提案の論文発表を行う予定である。 本課題で解析しているProlixibacter sp. MIC1-1とMIC1-4は系統的にBacteoidales目に分類されるが、本目の中で鉄腐食菌の報告事例は過去にない。加えて、本目は分離・培養難度が高いため培養株が少なく、本系統と鉄腐食の関連性は全く不明である。そこで、鉄腐食菌の特徴を見い出すために、非鉄腐食菌の形態学的特徴、生理・生化学性状、化学分類性状、分子遺伝学位置を解析し、新規微生物として提唱する。供試菌株には原油から分離し鉄腐食能が見られないMIC3-8株、干潟から分離したFu11-1株、Fu11-5株3株を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、解析用パソコンおよび解析ソフト 1式、インキュベーター 数台を購入する予定である。 昨年度、当初計画の仕様を更に満たす遠心機を購入したため、インキュベーター購入のための予算が不足し、44,001円の残金が生じた。本年度残金と次年度予算を併せて、次年度にインキュベーターを購入する予定である。
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