2013 Fiscal Year Research-status Report
石油備蓄基地施設から分離した腐食菌およびその他新規微生物の微生物分類性状の解析
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23770095
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯野 隆夫 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 研究員 (50550323)
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Keywords | 微生物腐食 / 原油 / 鉄酸化 / 硝酸塩還元 / 鉄還元 / Bacteroidales / Prolixibacter |
Research Abstract |
昨年から解析を実施した鉄腐食性細菌MIC1-1株とMIC1-4株の電子受容体試験と電子供与体試験を行った。その結果、これら2株は電子受容体に硝酸塩と酸素を、電子供与体に鉄顆粒 (Fe0)、2価鉄、システインを利用できることがわかった。 一方、原油から分離した非鉄腐食性細菌MIC3-8株の解析を開始した。MIC3-8株は通性嫌気性、非運動性、無芽胞、カタラーゼ陰性のグラム陰性菌であった。形態学的には、幅0.3-0.5 um、長さ3.4-6.3 umの桿菌であった。至適の生育温度、pH、塩濃度はそれぞれ35-37ºC、pH 7.0-7.5、2-3 % (w/v)であった。また、炭素源(D-グルコースや有機酸など)を必須に要求し、酸素の他、酸化鉄 (Fe3O4)を電子受容体に利用できる鉄還元菌であった。電子供与体にシステイン塩酸塩のみを利用し、鉄を利用できなかった。主要脂肪酸組成はiso-C15:0とanteiso-C15:0であった。イソプレノイドキノンタイプはMK-7であった。DNA G+C含量は41.3 mol%であった。16S rRNA遺伝子塩基配列に基づく系統解析を行った結果、MIC3-8株はBacteroidales目に含まれ、Meniscus、Mangrovibacterium、Marinifilum、Prolixibacter、Sunxiuqiniaらと系統群を形成したが、これらの属とは大きく独立した。したがって、MIC3-8株はBacteroidales目に属する新属新種の鉄還元菌であると考えられた。 一方、集積培養に成功した未知アーキアの純粋分離は大きな進展は見られないが、集積培養は安定している。電子供与体に水素を利用する可能性が考えられたが、むしろ阻害的に作用し、生育が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目標は、非鉄腐食細菌MIC3-8株の分類学的性状決定であり、形態学的特徴、生理・生化学性状、化学分類学的性状の大半の解析を終えた。残るはリン脂質分析のみである。 未知アーキアの分離については、参考となる情報が皆無の中、徐々にではあるが培養条件の特定につながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の目標は、石油備蓄施設環境中に分布する腐食菌と非腐食菌の微生物資源ライブラリーを構築する。 解析用パソコンにミュンヘン大学のチームが開発したソフトウェアARBをインストールした後、既知微生物の16S rRNA遺伝子塩基配列ライブラリーを作成する。本研究課題で得た分離株の16S rRNA 遺伝子塩基配列情報を組み込み、鉄腐食菌と非鉄腐食菌の系統関係を明らかにする。系統解析の精度を上げるため、Neighbour-joining (NJ)法、Maximum-likelihood (ML) 法、Maximum-parsimony(MP) 法も利用し、多方面からの系統解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、実験作業に集中したため、解析パソコンおよび解析ソフト1式の購入に至らなかった。次年度に、解析用パソコンおよび解析ソフト1式を購入する予定である。 今年度は、ライブラリー構築に必要な解析パソコンおよび解析ソフト1式の購入を勧める。予定の変更はない。
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