2011 Fiscal Year Research-status Report
初期エンドソームにおける脂質膜ダイナミクスの分子機構
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23770148
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田邊 賢司 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80423341)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞内輸送 / エンドソーム / 脂質膜 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
初期エンドソームからの選別輸送は、細胞外から取り込んだ物質の選別を行う場として知られており、シグナル伝達においても重要な役割を果たしているが、その分子メカニズムは多くの謎が残っている。なかでも輸送の最終段階である膜の変形、切断については関与する分子も含めてほとんどわかっていない。本研究では初期エンドソームからの選別輸送に着目し、その脂質膜変形/切断に関与する分子の同定/解析を行う。 我々は、輸送小胞の切断に必須のタンパク質であるダイナミンが初期エンドソームからの輸送に必須であることを見出した(Mesaki et al., PLoS ONE 2011)。本報告では、選別輸送の完了がエンドソームの移動能や酸性化のトリガーになっていることを見出し、そのカスケード機構を提唱した。 さらに、細胞骨格アクチンとその制御因子であるコルタクチンも初期エンドソームで働いていることを見出し(Ohashi et al., PLoS ONE 2011, Tanabe et al., Commun. Integr. Biol. 2011)、長い間謎に包まれていた選別輸送機構のメカニズムが明らかになってきた。 以上の報告では膜変形に関わるダイナミンや切断の張力となるアクチン・コルタクチンを同定し、報告してきた。我々は更なる阻害剤スクリーニングによって、脂質リン酸化酵素の同定を行い、初期エンドソームに特異的に局在するリン脂質を世界で初めて見出した。更に、そのリン脂質に結合する細胞内輸送制御タンパク質も同定し、その制御メカニズム解明が進んでいる(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に計画していた輸送関連タンパク質の同定/解析や複合体形成の解析はほぼ順調に進んでおり、その成果も学術論文の形で発表している(Mesaki et al., 2011, Ohashi et al., 2011, Tanabe et al., 2011)。ダイナミンの阻害剤であるDynasoreが初期エンドソームからの輸送を阻害すること、さらにその阻害がエンドソームの酸性化・移動能も阻害することを見出し、報告した(Mesaki et al., 2011)。さらに細胞骨格の一つアクチンも初期エンドソームからの輸送に必須であることや、アクチン制御タンパク質の一つであるコルタクチンも輸送に必要であることを見出し、報告した(Ohashi et al., 2011)。現在は脂質りん酸化酵素の一つであるフォスファチジルイノシトール4キナーゼの一つも輸送に必須であり、その産物であるフォスファチジルイノシトール4リン酸が初期エンドソーム上にあることを世界で初めて見出した(論文投稿中)。以上のことから、初期エンドソームからの輸送に必要なタンパク質の同定・解析は順調に進んでおり、その成果も着実に発表できている。一方、各タンパク質間の結合については再現性の得られる結果が得られず、条件検討が引き続き必要である。また、電子顕微鏡を用いた微細構造の解析についても未だ問題が残されており、実験系が完全に確立したとは言えない。24年度に予定している活性調節・脂質形態形成の実験系についてはほぼ確立している。以上のことから、業績面・材料の面でも予定以上に進展しているが、一部の実験系が確立できていないことから(2)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度で達成できなかった実験と平行して24年度に予定していた実験を開始する。23年度の実験として、電子顕微鏡を用いた細胞内の膜形態形成が充分に観察できていない。この問題については細胞固定法・透過処理の検討を進めており、予備実験段階では問題なく進んでいる。処理条件等の検討が必要な可能性はあるものの、実験遂行自体は可能と考えられる。各タンパク質間相互作用についても実験系の確立が必要であるが、各種阻害剤・塩濃度・界面活性剤の有無などを検討する事で改善が見られると思われ、予備実験でもはっきりした結合が見られるようになった組み合わせがあることを確認している。24年度予定分として、これまでに同定したタンパク質の活性調節機構の解析および膜形態形成の解析を中心に進める。リポソームを用いた脂質形態形成の解析手法については既に確立しており、必要な組み換えタンパク質についても順調に精製が進んでいる。今後、精製が済んだタンパク質から順に脂質形態形成解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は相互作用解析が終了しなかったことから、変異体作成や輸送能解析に遅れが生じた。次年度は相互作用解析の条件が決まり次第、その結合ドメインの同定・変異体作成を進める。繰り越し金は、変異体作成にかかるプライマー作成・DNA組み換え・タンパク質発現・精製等の費用にあてる。次年度研究費は、各タンパク質の酵素活性調節についてATP加水分解活性などをみることから、放射性同位元素の購入や使用料に予算を充当する。一方、脂質膜形態形成については電子顕微鏡サンプルの作成・脂質の購入費にあてる。消耗品の購入以外には細胞生物学会・生化学会などの国内学会旅費・参加費にあてる予定である。
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Research Products
(11 results)