2012 Fiscal Year Research-status Report
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23770157
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山田 康之 立教大学, 理学部, 准教授 (80386507)
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Keywords | 脱共役 / 阻害 / 調節 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までの研究から明らかになった枯草菌F1-ATPase(BF1)の強いADP阻害の原因として、非触媒部位へのATP結合の強さについて検討した。他の生物由来のF1-ATPaseでは、αサブユニットにある非触媒部位へのATP結合によって、ADP阻害が解除されることが知られている。BF1では、非触媒部位へのATP結合が弱くそのために強いADP阻害が見られるという可能性を検討した。非触媒部位近傍にTrpを導入し蛍光の消光によってATP、ADPの結合を測定したところ、その結合は十分強かった。さらに、非触媒部位がヌクレオチド結合能を持たないようにした変異体を作製し、そのADP阻害の様子を調べたが、野生型と大きな違いは見られなかった。これらの結果から、BF1では非触媒部位へのヌクレオチド結合の影響が触媒部位でのADP阻害には及んでいないことが明らかとなった。これは全く新しい知見であり、ATP合成酵素の調節を理解する上で重要な知見である。この成果は現在投稿準備中である。 一方、枯草菌細胞膜を用いたATP合成酵素の機能解析では、εサブユニットの構造及び、ATP結合の状態の違いによって、F1での反応とFoでのH+輸送の共役状態が変化する事がわかったが、その様子はこれまでに調べた好熱菌由来のATP合成酵素の場合とは異なる複雑なものであった。現在その詳細を調べている。 この他、枯草菌細胞内のATP濃度を測定するために、ATPセンサータンパク質であるATeamを枯草菌ゲノムに組み込むことに成功した。これにより様々な生育条件下での細胞内ATP濃度を測定することが可能となった。ATP合成酵素の変異体と組み合わせることで、ATP合成酵素の細胞内ATP濃度への影響を調べる実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載の平成23年度及び平成24年度以降の研究実施計画に挙げた項目の多くを達成する事ができた。 枯草菌細胞膜からのATP合成酵素の精製については、発現量が少なく、大量のサンプル調製は困難であると予想されたことから、次年度に大腸菌を宿主とした大量発現系を作製することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌細胞膜上でのATP合成酵素の発現量が少ないため、枯草菌ATP合成酵素のホロ酵素を大腸菌で発現させる系を構築する。精製酵素を用いて詳細な生化学的解析を行うとともに、細胞内ATP濃度センサーATeamと枯草菌ATP合成酵素変異体を組み合わせた変異株を作製し、in vivoでのATP合成酵素の調節について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これらの実験を進めるのに必要な試薬などの消耗品の購入が主な研究費の使用目的となる。 当初平成24年度までに予定していた枯草菌ATP合成酵素の大量精製を来年度以降行うこととしたため、繰越が生じた。繰越分は、枯草菌ATP合成酵素の大量精製に必要な界面活性剤などの購入や、現在投稿中、投稿準備中の論文の出版に必要な経費等に充てる計画である。
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