2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770171
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊島 健児 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (50569142)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非侵襲イメージング / in vivo / 好中球 |
Research Abstract |
本研究では独自に作製した高輝度量子ドット(QD)集合体を用い、非侵襲条件でin vivoでのマウス好中球表面の1分子の挙動を観察することを目標としている。以前に、我々はQDを適切な濃度条件下で急速凍結させることにより凝集させることのできる手法を見出し、blinkingを克服すると同時に、高輝度のQD凝集体を作成することに成功した。本研究では、この手法により作成されたQD集合体を遠心、ゲル濾過等の手法を通じて、輝度ならびにサイズの揃ったQD集合体を精製する方法を確立した。このようにして得られたQD集合体を用いることで、10 nm以下の精度での位置検出が可能であることが明らかとなり、現在、この集合体を用いて細胞をラベリングする手法を検討中である。また、ポリスチレンビーズの周りに多数のQDを結合させるといった、新たな高輝度QD集合体の作製方法を樹立することにも成功した。このようにして作成されたQD集合体は、急速凍結により精製されたQD集合体に比べて、輝度が明るくかつ質が揃っており、高い収率で生成することが可能である。また、このQD集合体はavidin-biotin反応を通じて生成されたものであり、容易に抗体等を付加することができる。このようにして得られたQD集合体について、細胞等のラベリング条件を検討すると同時に、マウス体内に投与した場合に、非侵襲下での観察に十分な輝度を発するかどうか、また、マウスの健康に影響がないかどうかを検討している。また、バルセロナ大学のM. Montes-Usategui氏との共同研究により、後焦点面における光圧力の測定により、正確な大きさの不明な物質であっても発生する力の測定できる顕微鏡のセットアップに着手している。現在、この顕微鏡の測定機器を新しく構築するとともに、光路の微調整に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
急速凍結によって非侵襲観察に用いることのできる高輝度QD集合体の生成方法を確立することに成功した。このようにして作成された高輝度QD集合体は高精度での位置計測が可能であることが明らかとなり、好中球をラベリングすることにより、in vivoにおいても高精度での測定が可能になるものと期待される。しかし、このようにして作成したQD集合体に関して、特定の物質を標識する方法を確立する必要がある。そこで我々は、ポリスチレンビーズの周りに多数のQDを結合させるといった新たな手法を通じて、高輝度QD集合体を作製することに成功した。このQD集合体は質が均一であり、avidin-biotin反応を通じて容易に分子等の標識が可能である。このような粒子の作製に成功したことは、想定以上の成果であるといえる。また、光圧力の測定による力測定顕微鏡の改良にも取り組んでいる。これまでに、レーザーの光路、測定に用いる機器やソフトウェア等の改良を行った。しかしトラップに用いるレーザービームの形を整えることに苦労しており、現在、共同研究者からのアドヴァイスを得て対処を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
作製に成功した高輝度QD集合体を用いて、まずは体外へと精製した好中球へのラベリングについて検討を行いたい。それと同時に、マウス体内において、非侵襲下での観察における観察、測定する系の構築を行う。また、このQD集合体は分子の標識をおこなうのに適しているものと考えられる。好中球以外にも、マクロファージやT細胞といった白血球への標識、ならびに、VEGFなどの因子を標識することも検討したい。また、後焦点面における光圧力の測定により、正確な大きさの不明な物質であっても発生する力の測定できる顕微鏡を確立させる。現在、トラップに用いるレーザー光路の調整に取り掛かっている。また、得られたシグナルには多くのノイズが含まれており、これを除去する作業を行う。この系を用いて、精製した好中球によるin vitroでの貪食作用時の力の計測を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高輝度QD集合体の作製にあたって、多くのQDが必要とされる。また、それを修飾するための試薬も必要である。ラベリングに際して各種の抗体を用いることになる。非侵襲下でのin vivoイメージングにあわせて装置を改良に備品を要し、データ解析のためのソフト購入、開発も必要となると考えられる。また、本研究ではin vivoイメージングだけでなく、好中球を採取するためにもマウスが必要となり、その購入・維持・飼育などの費用は研究者独自に用意しなければならない。マウスから好中球を採取するだけでなく、解析の過程で種々の培養細胞も使用するため、シャーレなどのプラスチック消耗品や培地血清類も多く消費することが予想される。本研究によって得られた研究結果は特許の取得、ならびに国際論文に投稿・掲載を目指しており、そのために経費が必要となる。
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