2011 Fiscal Year Research-status Report
新規ケラチン結合蛋白質による上皮細胞分化および増殖制御メカニズムの解明
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23770238
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
猪子 誠人 愛知県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 主任研究員 (30393127)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 上皮分化 / ケラチン / 中心体 / 細胞周期 / 一次線毛 |
Research Abstract |
上皮細胞の分化の特徴として、細胞内成分は極性を持って局在する。ケラチンは上皮特異的に発現する細胞骨格蛋白質であるが、極性をふくめ上皮分化における役割は不明であった。これまでに申請者らはケラチン結合蛋白質Albatrossが分化上皮細胞の極性制御に関わり、ケラチンがこれを促進することを見出してきた(Sugimoto, Inoko et al., J. Cell Biol., 2008)。さらにAlbatrossおよびtrichoplein (Nishizawa, Izawa, Inoko et al., J Cell Sci., 2005) をそのアミノ酸配列からTPHD分子群(トリコヒアリン・プレクチン類似ドメイン分子群)と名付けた。その特徴はケラチン結合蛋白質であることに加え、分化状態では主に細胞間接着部位に、そして増殖中は主に中心体に局在を変えることから(Ibi, Zou, Inoko et al., J. Cell Sci., 2011)、分化・増殖の両方に関わるユニークな分子群であると考えられる。本研究の目的は、このような分子群の持つ2つの局在・機能の相違点の分子機序を明らかにすることである。 本年度はこのうち中心体のtrichopleinと細胞周期の関わりを報告した(Inoko et al., J. Cell Biol., 2012)。中心小体でtrichopleinはAurora-Aキナーゼを活性化しており、これが一次線毛形成を抑制し、G1期からS期への円滑な細胞周期進行に寄与していることがわかった。 この研究結果は、一次線毛の動態が積極的に細胞周期のG1期からS期への進行またはG0期への遷移の分岐の鍵となっていることを示している。またその分子機序からはAurora-A阻害剤が一次線毛を生じないがん細胞を選択的に分裂障害に導き、死滅させ得る可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はtrichopleinの中心体機能について報告した(Inoko et al., J. Cell Biol., 2012)。すなわち、中心小体でtrichopleinはAurora-Aキナーゼを活性化しており、これが一次線毛形成を抑制し、G1期からS期への円滑な細胞周期進行に寄与していることがわかった。 この研究結果は、一次線毛の動態が積極的に細胞周期制御に関わる新知見、具体的には細胞のG1期からS期への進行またはG0期への遷移の分岐の鍵となっていることを示している。またその分子機序からはAurora-A阻害剤が一次線毛を生じないがん細胞を選択的に分裂障害に導き、死滅させ得る可能性も示された。 この点で当初の目的であるTPHD分子群による新規分化・増殖制御機構の解明を推し進めることが出来たと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでの研究成果をさらに推し進め、TPHD分子群の2つの局在・機能すなわち、(1)細胞間接着部位での細胞極性制御機能と(2)中心体での細胞増殖関連機能の相違点を分子機序として詳細に明らかにすることである。そのために、(1)現在得ているAlbatross結合蛋白質候補(ARFIP2, γ-Tubulin Ring Complex(γ-TuRC)蛋白質群)については、分子間結合および機能欠失実験の表現型観察により細胞レベルまで考慮したAlbatrossとの機能相関の解析を行う。(2)加えて、種々の生化学的方法~MS解析やプロテインチップによるAlbatross結合蛋白の追加検索も行い、結果をまとめあげる。(3)また、すでに同定しているTrichoplein~Aurora-A経路や(4)細胞間のTrichopleinの機能をはじめ、(5)複数のTPHD分子についても同様の観点からの解析を可能な限り行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)消耗品費:本研究の遂行のためには培養細胞を用いた免疫染色・細胞工学・遺伝子工学を駆使した手技が必要である。そのための消耗品として、抗体、細胞・大腸菌培養に必要な血清・培地、実験器具(滅菌・ディスポーザブルを含む、制限酵素、DNA、siRNA合成等の試薬類、実験用動物が必要である。(2)旅費等:研究発展のためにも国内・海外学会での発表・情報交換が必須である。その旅費と学会参加費が必要である。これとは別に、論文発表に必要な経費(英文校正料、投稿・別刷り料)、印刷費(成果公開のためのポスターを含む)を考えている。
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