2012 Fiscal Year Research-status Report
有機物投入における水稲根系の発生・枯死が生育・収量と炭素貯留に及ぼす影響
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23780013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田島 亮介 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60530144)
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Keywords | 水稲 / 根系 / 発生枯死 / 有機質肥料 / 収量 / 土壌炭素 |
Research Abstract |
水稲の有機栽培では,有機質肥料が遅効性であるため生育前半に栄養分の不足が起きることがある.このような条件下で水稲根系の動態は変化すると予想されるが,有機質肥料施用下で水稲根系について調査した研究例は多くない.また,近年,根系調査において根の発生・枯死を含めた動態の把握が重要になりつつあるが,水稲根系の発生・枯死を含めた動態は有機質肥料施用条件下のみではなく,多くの生育条件で明らかではない.このような有機質肥料の施用にともなう根の発生・枯死の動態は水稲の生育・収量とともに土壌炭素の動態に影響を与えると考えられる.そこで,有機質肥料施用水稲栽培における水稲の生育・収量および発生・枯死を含めた根の動態について2年間の圃場試験をおこなって明らかにした. その結果,まず気象条件が平年並の年は有機質肥料区が化学肥料区よりも収量が低い傾向であったが,平年よりも高温・多照の場合は,両区で同等となった.一方,根は,現存量には2009,2010年ともに二つの処理区の間で大きな差異は見られなかったが,生育前半はともに有機質肥料区で根の発生量が大きかった.これらの生育・収量や根系の動態の違いは,化学肥料区と比較して有機質肥料区では生育初期の可給態窒素が少ないこと,生育前半で有機質肥料区の土壌アンモニウム態窒素量が化学肥料区と比較して低いことから,生育前半の可給態窒素量の差異に起因すると考えられた.また,根の枯死量の増加は,有機質肥料区で水田の還元状態が生育初期に化学肥料区より早く進行していることから,土壌の還元状態に関係する可能性も考えられた.加えて,2年間ともに出穂期以降の生育後半にも根の発生が観察された.これらのことから,有機質肥料を施用する水稲有機栽培において,慣行栽培より収量が低下しても土壌炭素蓄積は多くなると予測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに研究を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は圃場試験で得られた情報を元に長期的な土壌炭素予測をおこなう.特に枯死した根が土壌炭素に及ぼす影響について有機質肥料の効果や他の植物残渣の効果と比較しながら,定量的に予測する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
圃場試験・分析用の消耗品や試薬および成果発表等のための旅費,英文校閲費に使用する
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